生活

エレファントカシマシ 生活歌詞
1.男は行く

作詞:宮本浩次
作曲:宮本浩次

ああ 男よ行け 男よ勝て さぁ男よ
俺はお前に負けないが
お前も俺に負けるなよ

ああ 女の人よ 俺の話を聞いてくれ
世間の風は重たいが
俺はやっぱり戦うよ

さとりすましたこの身には
肌にしみじみ染みてきた
浮世の風が さみしさが
身にしみじみ染みてきた 浮世の風が
俺達は自由な男じゃないか

ああ 男よ行け 男よ勝て
俺はお前に負けないが
お前も俺に負けるなよ

さとりすましたこの身には
身にしみじみ染みてきた
男よ 男よ 行け

我ら男たちの楽しき夢は
俺に人のあわれを教え
ビルは山の姿を見せ
群れは孤独に気付かしむ ああ

ああ 俺はひとり行く
ビルを山に見立てるために
浮世の風を味わいに

ああ 青蝿のごとく小うるさき人達よ
豚に真珠だ貴様らに
聞かせる歌などなくなった

さとりすましたこの身には
肌にしみじみ染みてきた
浮世の風が さみしさが
身にしみじみ染みてきた 浮世の風が
俺達は 俺達は 男じゃないか

男よ行け 男よ勝て
俺はお前に負けないが
お前も俺に負けるなよ

男よ 行け 行け


2.凡人-散歩き-

作詞:宮本浩次
作曲:宮本浩次

うらやましきはカラス共に
我が肉食えやと言いたる詩人よ
ああ なぜに俺は家の中で暖まりながら
またゴロゴロとしてあくびして
不真面目にこの俺はいつも
「おお、我が余命いく日なりや。」と
老爺を気取りて指おり数え、
ああ俺はあわれな凡人よ

―明日も笑顔で人と話し―

座る電車の座席の前に
手すりにもたるる老婆がひとり
ああ 恐ろしき世間の前に
俺は座席を立つものよ

楽しげに ああ 人と会い、笑い、
希望は失せたが死ねぬ身の
せめては余命いくばくなりや、と老爺を気取り、
ふとんで涙をしぼりて
町に出、笑い、凡人ああここに有り

この俺はいつも
「おお、我が余命 いく日なりや。」と
いつか老爺となる日を待つ身となった
この俺はあわれな凡人よ

俺は生活を追い求む、
世間に食われ命をけずり、
孤高のうちに死すより
俗なる我が世間に遊ぶものよ、
今日も町に出、手足取られ導びかれ、
我が同類と
もたれ合い、あざけり合いて、
凡人の意地と意地、
命がけなるそぞろ歩きよ

死んだら、俺が死んだら
立派な墓を
人のあわれを誘う悲しい墓を建ててくれ

俺は歩く「金」と「平和」と「女」と「虚名」を求め
世間と手を取り合いて散歩き
今日も世間を散歩きよ


3.too fine life

作詞:石森敏之・宮本浩次
作曲:石森敏之・宮本浩次

雨が降り続き けだるさが残った
はやく時間よ過ぎてくれ 力も出てこない
too fine life この先何がおこるやら
悪いようにはならないと
疲れた身体 無理矢理に 何かいいことを探し

この先どうなるのか この雨がやんだら
きっと気分も晴れてくる この雨がやんだら
too fine life この先何がおこるやら
悪いようにはならないと
疲れた身体 無理矢理に たたきおこし考える
明るき未来を つらき今日を 俺はここで考える

雨が降り続き けだるさが残った
はやく時間よ過ぎてくれ 力も出てこない
too fine life この先何がおこるやら
俺は俺で好きにやるさ

疲れた身体 無理矢理に 何かいいことを探し
疲れた身体 無理矢理に たたきおこし考える
明るき未来を つらき今日を

この先何がおこるやら 悪いようにはならないさ


4.偶成(ぐうせい)

作詞:宮本浩次
作曲:宮本浩次

ああ俺には何か足りないと
何が足りぬやらこの俺には
弱き人のその肩に
やさしき言葉もかけられず
人を思ううちが花よと
わずかに己れをなぐさめた

ああ

ひとりいれば人を思い
もてあます時は仕事を思い
道を歩めば人に出会い
町に出ずれば車に出合う
ああ平和なるこの生活が
なぜに我らを蝕(むしば)むのか

ああ

ああ哀れ 時の力は我が命をいつか食いつくし
しかばねとなるまで
しかばねになるまで
何が足りぬやら

我が命尽きる
その日が来るまでに
時は我が血を吸い身を削り
生活手にす遑(いとま)も無きがままに

ひとりベンチに腰かけて
歩み行く人を眺めやった
ああまじりあいたる町の響きを
ひとり聞きながら眺めやった
ああうち仰ぐ空のかなたに
きらりと光る夕陽あり
流るるドブの表を
きらりとさせたる夕陽あり
俺はこのため生きていた
ドブの夕陽を見るために
ドブの夕陽を見るために


5.遁生

作詞:宮本浩次
作曲:宮本浩次

これから先は死ぬるまで
表へ出ないでくらす人。
たまに表へ出るときも
タバコと散歩に日をつぶす。
働く妻の横顔に力のぬけた目を向ける
鳴るのはテレビの音ばかり…。

「生活」無き身のはかなさは
くるむふとんの温かさ
ゴロリと寝ころぶ頭上には
積み上げられた本の山
苦しみ無き身のむなしさよ
浮かぶ未来は苦しげで…。

コツコツ鳴ってる火鉢を間に
誰かが俺に聞いている。
「お前はなぜに 引きこもる?」
俺は何も答えずに
引きつる笑顔を向けていた。

これから先は死ぬるまで
表へ出ないでくらす人。
コツコツ鳴ってる火鉢を間に
誰かが俺に聞いている。

「体の調子は何うなんだ?」
「寄生虫にやられてる。」
「お前に女は必要か?」
「ペットのようなら飼ってもいい。」
「車に乗って出かけよう。」
「俺はふとんで寝ていよう。」
「それじゃテレビを見るとしようか?」
「悲しすぎて見てられぬ。」
「お前は何が欲しいのだ?」
「夕陽に浮かぶ富士の山。」
「お前はなぜに生きている?」
「小さき花を見るために。
小さき花を見るために。」

歌を誰か知らないか?
つまらぬときに口ずさむ、
やさしい歌を知らないか?
金のために何をする?
女のために何をする?
人のために何をする?
それでお前は何処に行く?
それで俺は何処へ行く?
ラ・ラ・ラ…。

どうだ貴様もくらさぬか?
俺と一緒に寝てくらそう。


6.月の夜

作詞:宮本浩次
作曲:宮本浩次

月の夜よ
月の夜よ
一夜の歌を やさしき詩(うた)を
暗黒の夜にひびかしむ
はかなき光で

さよなら
さよなら今日よ
ああ
皆が眠りし月の夜に
も少し遊ぼうか

太陽照りし真昼には
俺にくるえや働けや
強き光もて俺をあざ笑う
人の働く真昼には
俺は家にて寝てくらしている

月の夜よ
月の夜よ
今日も我と遊ぼうか
弱くやさしき光もて
我をつつみたまえ


7.晩秋の一夜

作詞:宮本浩次
作曲:宮本浩次

ある夜ひとりで火鉢に手をかざし
くもった空気の部屋のうち
あわれ ああ いまだに生き残る
はかなき虫の鳴き声と共(とも)にいた
ああ ひとり動かず部屋にいた
ある秋の夜長に

過ぎたる月日も若きこの身には惜しくはないけれど
残った余生には希望を持とうか

老いたる姿は若きこの俺の懐かしい姿よ
いずれは死ぬる身の懐かしい遊びよ

日々のくらしに背中をつつかれて
それでも生きようか 死ぬまでは……

ある秋の夜 ひとりで火鉢を抱(だ)き
くもった部屋の空気で息をした

いまだに死ねぬ哀れなる虫の音と
秋の夜長を共に遊んでいた
ああ ひとり動かず部屋にいた
ある秋の夜長に