倍賞千恵子ベストセレクション

倍賞千恵子 倍賞千恵子ベストセレクション歌詞
1.下町の太陽

作詞:横井弘
作曲:江口浩司

下町の空に かがやく太陽は
よろこびと 悲しみ写す ガラス窓
心のいたむ その朝は
足音しみる 橋の上
あゝ太陽に 呼びかける

下町の恋を 育てた太陽は
縁日に 二人で分けた 丸いあめ
口さえきけず 別れては
祭りの午後の なつかしく
あゝ太陽に 涙ぐむ

下町の屋根を 温(ぬく)める太陽は
貧しくも 笑顔を消さぬ 母の顔
悩みを夢を うちあけて
路地にも幸(さち)の くるように
あゝ太陽と 今日もまた


2.瞳とじれば

作詞:岩谷時子
作曲:いずみたく

瞳とじれば 聞こえる声よ
わたしは逢いたい あの人に
夢を見ては 涙ぐむ
わたしの恋 だれも知らない

瞳とじれば 浮かぶ笑顔
わたしは恋しい かえらぬパパが
小さくとも この幸福(しあわせ)
わたしはパパ お嫁に行くの

瞳とじれば 夕焼け雲よ
わたしは行きたい 故郷へ
幼い日の 心のまま
妹たち 浜辺で歌おう

瞳とじれば まぶしい太陽
わたしはたのしい あの日から
初めての 口づけに
バラ色の 愛の花が咲く
愛の花が咲く
愛の花が咲く


3.ラブレター

作詞:永六輔
作曲:小川寛興

“あなたが好き”と書くと
ただ それだけで
胸のたかなる 私
ふるえる指で
手紙を破りすてるの
だって だって 恥かしいわ
あなたには とどかない
私のラブレター

あなたの手紙読んで
ただ それだけで
しあわせになる 私
夜ふけてひとり
手紙を胸に眠るの
だって だって 愛してるの
私には 狂おしい
あなたのラブレター

“あなたが嫌い”と書くと
ただ それだけで
涙ぐんでる 私
にじむ言葉を
こまかく破りすてるの
だって だって 好きなのよ
あなたには とどかない
私のラブレター


4.おはなはんの歌

作詞:横井弘
作曲:小川寛興

いつでも 明るく
南の日射しのように
だれにも優しく 愛に生きる人
胸に抱いた 望みを育てて
いつでも 明るく
笑顔消さない おはなはん

雨の日 風の日
激しいいくさの後も
涙に負けずに 唄う子守唄
指と指を けなげにつないで
雨の日 風の日
夢を捨てない おはなはん

春なつ 秋ふゆ
落葉と花とを越えて
涯てない旅路の 愛に生きる人
過ぎた道の 遠さは言わずに
春なつ 秋ふゆ
歩きつづける おはなはん


5.私でよかったら


6.雨に濡れた恋

作詞:橋本淳
作曲:すぎやまこういち

恋の甘い嘘が
とても つらいのよ
思い出が わたしに
涙を はこぶ

誰もいない お部屋
ため息と わたし
美しい 別れの
指輪がつらい

いつから あなたは
わたしをすてて
雨にぬれた 恋に
さそわれたの

白い鏡にうつる
さみしい微笑
なぐさめは あなたの
遠いささやき
愛の ささやき

いつからあなたは
わたしをすてて
雨にぬれた 恋に
さそわれたの

好きなひとがすてた
最後のことば 思い出が今夜も
涙をはこぶ 涙をはこぶ


7.さよならはダンスの後に

作詞:横井弘
作曲:小川寛興

何も言わないで ちょうだい
黙ってただ 踊りましょう
だってさよならは つらい
ダンスの後に してね
ここはお馴染(なじ)みの クラブ
いつものように 踊りましょう
せめてキャンドルの下で
泣くのだけは やめて……
だれにも負けず 深く愛してた
燃えるその瞳(め)もその手も これきりね
何も言わないで ちょうだい
黙ってただ 踊りましょう
だってさよならは つらい
ダンスの後に してね

少しカクテルを ちょうだい
酔ったらまた 踊りましょう
だってさよならは つらい
ダンスの後にしてね
いまは懐かしい クラブ
気のすむまで 踊りましょう
せめて恋人の ままで
やさしく肩を 抱いて……
初めて聞いた 夜のささやきが
たとえ短い夢でも 忘れない
少しカクテルを ちょうだい
酔ったらまた 踊りましょう
だってさよならは つらい
ダンスの後に してね

あなたがとても 好きなこの曲も
明日(あす)はどこかで独りで 聞くだけね
何も言わないで ちょうだい
黙ってただ 踊りましょう
だってさよならは つらい
ダンスの後に してね


8.さくらのバラード

作詞:山田洋次
作曲:山本直純

江戸川に雨が降る
渡し舟も 今日はやすみ
兄のいない 静かな町
どこに行ってしまったの
今ごろ なにしてるの
いつもみんな 待っているのよ
そこは晴れているかしら
それとも冷たい雨かしら
遠くひとり 旅に出た
私のお兄ちゃん
どこかの街角で
みかけた人はいませんか
ひとり旅の 私のお兄ちゃん

(セリフ)
いつもそうなのよ いつも……
「さくら!しあわせにくらせよ」って……
もう帰らないって
あの時いったけど……

そこは晴れているかしら
それとも冷たい雨かしら
遠くひとり 旅に出た
私のお兄ちゃん
どこかのお祭りで
見かけた人はいませんか
ひとり旅の 私のお兄ちゃん


9.あざみの歌

作詞:横井弘
作曲:八洲秀章

山には山の 愁(うれ)いあり
海には海の かなしみや
ましてこころの 花ぞのに
咲きしあざみの 花ならば

高嶺の百合の それよりも
秘めたる夢を ひとすじに
くれない燃ゆる その姿
あざみに深き わが思い

いとしき花よ 汝(な)はあざみ
こころの花よ 汝はあざみ
さだめの径は 涯てなくも
かおれよせめて わが胸に


10.麗人草の歌

作詞:松村又一
作曲:加藤三雄

愛の涙に やさしく濡れて
咲くが乙女の 生命(いのち)なら
何故に散らした あの夜の風よ
今は返らぬ 夢かなし

月のテラスで やさしく肩を
抱いたあの夜の あの人が
今日も呼ぶ呼ぶ 嘆きの窓に
強く生きよと 夢に呼ぶ

涙 涙の 幾年越えて
帰るこの春 花の春
咲いて香れよ 麗人草の
花は紅 あの丘に


11.ここに幸あり

作詞:高橋掬太郎
作曲:飯田三郎

嵐も吹けば 雨も降る
女の道よ なぜ険し
君を頼りに わたしは生きる
ここに幸あり 青い空

誰にも言えぬ 爪のあと
心にうけた 恋の鳥
ないてのがれて さまよい行けば
夜の巷の 風かなし

命のかぎり 呼びかける
谺(こだま)の果てに 待つは誰
君によりそい 明るく仰ぐ
ここに幸あり 白い雲


12.あなたと共に

作詞:矢野亮
作曲:吉田矢健治

あなたと共に 行きましょう
恋の甘さと 切なさを
はじめて教えて くれた人
それが 私の運命(さだめ)なら
あなたと共に 行きましょう

あなたと共に 泣きましょう
辛い浮世の 波風に
破れた翼の はぐれ鳥
それが女の 弱さなら
あなたと共に 泣きましょう

あなたと共に 呼びましょう
胸に点った このあかり
消さずにかばって 抱きしめて
それが 本当の 希望(のぞみ)なら
あなたと共に 呼びましょう


13.かりそめの恋

作詞:高橋掬太郎
作曲:飯田三郎

夜の銀座は 七いろネオン
誰にあげよか くちびるを
かりそめの恋 あゝ虹の恋
ふと触れ合うた 指かなし

どうせ売られた 花嫁人形
胸で泣いても 笑い顔
かりそめの恋 あゝ虹の恋
まぼろしならぬ 君欲しや

金の格子の 鳥籠抜けて
飛ぶか心の 青空へ
かりそめの恋 あゝ虹の恋
夜風よ吹くな やは肌に


14.さくら貝の歌

作詞:土屋花情
作曲:八洲秀章

美(うるわ)しき 桜貝一つ
去り行ける 君にささげん
この貝は 去年(こぞ)の浜辺に
われ一人 ひろいし貝よ

ほのぼのと うす紅染むるは
わが燃ゆる さみし血潮よ
はろばろと かよう香りは
君恋うる 胸のさざなみ

ああなれど 我が想いははかなく
うつし世の なぎさに果てぬ


15.忘れな草をあなたに

作詞:木下竜太郎
作曲:江口浩司

別れても 別れても 心の奥に
いつまでも いつまでも
おぼえておいて ほしいから
しあわせ祈る ことばにかえて
忘れな草を あなたに あなたに

いつの世も いつの世も 別れる人と
会う人の 会う人の
さだめは常に あるものを
ただ泣きぬれて 浜辺につんだ
忘れな草を あなたに あなたに

喜びの 喜びの 涙にくれて
抱(いだ)き合う 抱き合う
その日がいつか 来るように
ふたりの愛の 思い出そえて
忘れな草を あなたに あなたに


16.心の窓に灯を

作詞:横井弘
作曲:中田喜直

いじわるこがらし 吹きつける
古いセーター ボロシューズ
泣けてくるよな夜だけど
ほっぺをよせて ともしましょう
心の窓に灯を
ほら えくぼが浮かんでくるでしょう

真珠に輝やく 飾り窓
うつるまずしい シンデレラ
ポッケにゃ 何にもないけれど
かじかむ指で ともしましょう
心の窓に灯を
ほら 口笛ふきたくなるでしょう

ダンロを囲んだ 歌声を
遠くきいてる 細い路地
ちっちゃな たき火は消えたけど
お空をみつめ ともしましょう
心の窓に灯を
ほら 希望がほのぼのわくでしょう


17.雪の降る町を

作詞:内村直也
作曲:中田喜直

雪の降る町を 雪の降る町を
思い出だけが 通りすぎて行く
雪の降る町を
遠いくにから落ちてくる
この想い出を この想い出を
いつの日にか包まん
あたたかき幸福(しあわせ)のほほえみ

雪の降る町を 雪の降る町を
あしあとだけが 追いかけてゆく
雪の降る町を
一人こころに満ちてくる
この哀しみを この哀しみを
いつの日かほぐさん
緑なす春の日のそよ風

雪の降る町を 雪の降る町を
息吹きとともに こみあげてくる
雪の降る町を
誰も分からぬ わが心
このむなしさを このむなしさを
いつの日か祈らん
新しき光降る鐘の音


18.ちいさい秋みつけた

作詞:サトウハチロー
作曲:中田喜直

だれかさんが だれかさんが
だれかさんが みつけた
ちいさい 秋 ちいさい 秋
ちいさい 秋 みつけた
めかくしおにさん 手の なるほうへ
すました お耳に かすかに しみた
よんでる 口笛 もずの声
ちいさい 秋 ちいさい 秋
ちいさい 秋 みつけた

だれかさんが だれかさんが
だれかさんが みつけた
ちいさい 秋 ちいさい 秋
ちいさい 秋 みつけた
おへやは 北むき くもりの ガラス
うつろな 目の色 とかした ミルク
わずかな すきから 秋の風
ちいさい 秋 ちいさい 秋
ちいさい 秋 みつけた


19.この道

作詞:北原白秋
作曲:山田耕筰

この道はいつか来た道
ああ そうだよ
あかしやの花が咲いてる

あの丘はいつか見た丘
ああ そうだよ
ほら 白い時計台だよ

この道はいつか来た道
ああ そうだよ
お母さまと馬車で行ったよ

あの雲もいつか見た雲
ああ そうだよ
山査子(さんざし)の枝も垂れてる


20.赤とんぼ

作詞:三木露風
作曲:山田耕筰

夕やけ小やけの 赤とんぼ
おわれてみたのは いつの日か

山の畑の くわの実を
小かごにつんだは まぼろしか

十五でねえやは 嫁にゆき
お里のたよりも たえはてた

夕やけ小やけの 赤とんぼ
とまっているよ さおのさき


21.叱られて

作詞:清水かつら
作曲:弘田竜太郎

叱られて
叱られて
あの子は町まで お使いに
この子はぼうやを ねんねしな
夕べさみしい 村はずれ
こんときつねが なきゃせぬか

叱られて
叱られて
口には出さねど 目になみだ
ふたりのお里は あの山を
越えてあなたの 花の村
ほんに花見は いつのこと


22.城ヶ島の雨

作詞:北原白秋
作曲:梁田貞

雨はふるふる 城ヶ島の磯に
利久鼠の 雨がふる
雨は真珠か 夜明けの霧か
それとも私の 忍び泣き

舟はゆくゆく 通り矢のはなを
濡れて帆あげた ぬしの舟
ええ 舟は櫓でやる 櫓は歌でやる
歌は船頭さんの 心意気

雨はふるふる 日はうす曇る
舟はゆくゆく 帆がかすむ


23.旅愁

作詞:犬童球渓
作曲:オードウェイ

更け行く秋の夜 旅の空の
わびしき思いに ひとりなやむ
恋しやふるさと なつかし父母
夢路にたどるは 故郷(さと)の家路
更け行く秋の夜 旅の空の
わびしき思いに ひとりなやむ

窓うつ嵐に 夢もやぶれ
遥けきかなたに ひとりまよう
恋しやふるさと なつかし父母
思いに浮かぶは 杜のこずえ
窓うつ嵐に 夢もやぶれ
遥けきかなたに ひとりまよう


24.ローレライ

作詞:E.P.Silcher・訳詞:近藤朔風
作曲:E.P.Silcher

なじかは知らねど 心わびて
昔の伝えは そぞろ身にしむ
わびしく暮れゆく ラインの流れ
入日に山々 赤くはゆる

うるわしおとめの いわに立ちて
こがねのくしとり 髪の乱れを
ときつつ口ずさぶ 歌の声の
くすしき力に たまもまよう


25.埴生の宿

作詞:里見義
作曲:ビショップ

埴生(はにゅう)の宿も わが宿
玉のよそおい うらやまじ
のどかなりや 春の空
花はあるじ 鳥は友
おおわがやどよ
たのしとも たのもしや

ふみよむ窓も わが窓
瑠璃(るり)の床(ゆか)も うらやまじ
きよらなりや 秋の夜半(よわ)
月はあるじ むしは友
おおわが窓よ
たのしとも たのもしや


26.惜別のうた

作詞:島崎藤村
作曲:藤江英輔

遠き別れに 耐えかねて
この高殿に のぼるかな
悲しむなかれ わが友よ
旅の衣を ととのえよ

別れといえば 昔より
この人の世の 常なるを
流るる水を ながむれば
夢はずかしき 涙かな

君がさやけき 目の色も
君くれないの 唇も
君がみどりの 黒髪も
またいつか見ん この別れ