マダム·ヴァイオレット

六弦アリス マダム·ヴァイオレット歌詞
1.アリス在りし、或るアリス在りし。

作曲·編曲:六弦A助

運命は意圖 辿りしもの
迴るサダメは唯一つ…

人の本質 變わらぬもの
繕えど答えは一つ…

異端の仔等 庇い散った
母は聖者そのものの樣で
國を去りて彷徨えども、
心は未だあの日に置き去り
異端者に捧ぐ紛い物の微笑み
本音は暗き胸に…

過ぎし日々に馳せる想い
募るほど心は荒む
握りしめた手のひらから
母(あのひと)の血が滲む

─19歲になる目覺めの朝
憎念(それ)はついに花開くでしょう─
共に生きた仔等へ、贈る死出の宴
其れは甘く熱く私を焦がすでしょう。
一振りの慈悲は持ち合わせないの
私を樂しませて…

舞い散りたる赤い花弁(はな)に
身を埋めるように抱いた
痺れるほど驅け巡るは
背德という名の炎(ひ)
憎惡(いかり)の果て目覺めしもの
暗き血に眠る運命か
高き道を閉ざす者に
與えましょう煉獄の炎(ひ)


2.秘密の地下室は死の香り

作曲·編曲:六弦A助

「誰も私の大事な寶物を知りませぬ
其れは秘密の小さな筐の中に在るのです」

此はとても滑稽でしょう?
男達は甘い噓で夢を見せて虜にして、、、
まあ、何て素敵。
ほんの少し演じるだけ。
主導權は男達に在ると思わせてあげましょう。
首輪を召して。

時に弱いフリをしましょう (彼を虜にする秘訣)
案じさせて惹き付けたら、淚見せましょう。
他の誰かに獲られぬ為に…。
此も一つの生き方でしょう?

本氣になりさえしなければ良い。
愛は語るだけ、其れで良い。
熱くなればほら、失うから、また。
愛されるだけの愛で良い。

──あの彼は貿易商。今はいない貿易商。
少しくらいなら好きだったかしら。

知らない世界の事 彼は話してくれた
其れは夢見たような異國の物語
──彼は私の寶でした。
やがて彼を奪う影 地下で肉を切り刻んで
血にまみれてまた獨り
あのね、せめて私を殺して…。


3.純潔娼婦

編曲:六弦A助

「彼は私の寶なのです」
いつしか二人は鳥のように
自由に異國を旅立つ事
夢見て朝を待ち續けて…

この街にはもう、居場所は無く
いつしか二人の契りもまた、
灰に塗れた此の小部屋を
より狹くして、夢を見せず

私に愛した人は傍らに
吹き荒ぶ風に髮が搖れる
寒さに目覺めて醉いも醒めたなら
またいつもの樣に荒れるのです
戾らない日々、癒えぬ傷跡、
夜が來る度罪が增すだけ…

私を選んだあの人の為に、
二人で過ごした日々の為に
この體をまた罪が貫いて、
掃れぬ二人は夢の跡


4.畫家と貴婦人

作曲·編曲:六弦A助

「他の誰よりも美しく描きなさい」
其の瞳は銳く、魔女の其れととも、、、

私の生命は彼女の氣まぐれに在り、
才有る數多の畫家は殺された。
盡きせぬ不安と高鳴る鼓動は、
惡戲に搖れる筆を止めた。

他の誰よりも美しきものは、
目では量れない盡きせぬ意志。
人が美しく在る理。
微笑む貴婦人、默したアトリエ──。
重なる意識に迷い無し。
美しきもの、かく在るべきか。

窗の外は雪。足跡が黑く染めた。
走らせた筆は、余白を隱した。
雪が激しく降り止まない夜は、
醜きものを隱す為。

他の誰よりも美しきものは、
他の誰よりも醜いもの。
其の裡返しの理示した
カンパすに宿る姿一つ。
(ある畫家の手記より)


5.そのス一プを口にしてはいけません。

作曲·編曲:六弦A助

あらなんて素敵な事でしょう
氣付いたらすぐ始めてみましょう
名うての畫家を集めてみては
その筆で美貌を描かせる。

まるでこの皮膚(はだ)光を放つ樣
其れは鏡を見ているような出來ね。

これは如何した事でしょうか
美しさが日々失われる。
朝露に濡れる薔薇のような
若さを湛えた女(もの)が憎い
嗚呼そうだわいっそ摘み取って
妾(わたし)の物にしてしまえばいいのね。

─誰が為に罪は課せられるべく
戰々恐々 來る禍つ間─

地下室の扉の先は
呻き聲が滿たす遊園地(ひみつ)
美麗な女(もの)だけを集め
引き裂いて食してみましょう

取り迂んで滿たしても、また求めてしまう
それだけで空き足らず幼子さえも…
蠢く闇 潛む暴徒 私の俺の娘を
返せと繰り言吐き 狂相浮かべ
組み敷かれて嬲られては斷頭台に向かわせ
永久に美しくある妾の夢露と散る。


6.Miss Violet

作曲·編曲:六弦A助

それは夢うつつ──。爪を伸ばした娼婦。
數多願えども葉う事は無い夢。

一つ、また一つ。夜每重ねる野心。
その後に世繼ぎは無く、
運命に搖れる日々。
それは身の卑しき者を招き入れる舞台。
運命に搖れるは先を憂う者の身か──。
夜明けを待たずに招かれざる者、美し。

娼婦(おんな)、詩を詠む。蒼く美しい夜。
その體に觸れる者、傾國の代償。
惡意に滿ちた美貌は寵愛を求める。
その體に世繼ぎは無く、運命に搖れる日々。
追い詰められたその果てに、
間違いを身籠もる。
運命に搖れるは先を憂う者の身か──。
美貌は裁かれ、二つに裂かれ空を舞う。
激しい雨音、それは誰の悲しみか。
裁きの記憶は降るしきる雨に消された…。

死してなお、君の名を──。
それはまた、夢うつつ──。


7.惡德の哲學

作曲·編曲:六弦A助

其れが例へ何者でアレ、
妾の意識に變わりは無し。
所詮、一度限りの夢を
彷徨ふ事に變わりは無し。

一つ、二つ、綺麗に並び給ふは一夜限りの噓。
愛や戀や、富や名聲、心と體、同じ轍。

要らぬ知らぬ、誠實なる言葉と裡の意圖。
操りの糸すら見えぬ演出の意圖。──幕開。

夜每秘め事。惑ひ無き聲纏ひ、
爪の先まで隙無し。かく愛無し。

幕が上がれば其處は、虛構、演目:「妾」
薔薇は幕間までは頂く必要無し。

悅に搖れる聲と表情、
程良く紅く肌染まりて、、、
重ねたその背に爪を立て、
耳元でまた、囁く夢。
一夜限り。されど全ては
與えず求めさせる美學。
一人、二人、綺麗に
並び給ふは誰が見せし蝶か。──幕間。