元気です。

吉田拓郎 元気です。歌詞
1.春だったね

作詞:田口淑子
作曲:吉田拓郎

僕を忘れた頃に
君を忘れられない
そんな僕の手紙がつく

くもりガラスの窓をたたいて
君の時計をとめてみたい
あゝ僕の時計はあの時のまま
風に吹きあげられたほこりの中
二人の声も消えてしまった
あゝ あれは春だったね

僕が思い出になる頃に
君を思い出にできない
そんな僕の手紙がつく

風に揺れるタンポポをそえて
君の涙をふいてあげたい
あゝ僕の涙はあの時のまま
広い河原の土手の上を
ふり返りながら走った
あゝ あれは春だったね

僕を忘れた頃に
君を忘れられない
そんな僕の手紙がつく

くもりガラスの窓をたたいて
君の時計をとめてみたい
あゝ僕の時計はあの時のまま
風に吹きあげられたほこりの中
二人の声も消えてしまった
あゝ あれは春だったんだね


2.せんこう花火

作詞:吉屋信子
作曲:吉田拓郎

せんこう花火がほしいんです
海へ行こうと思います
誰かせんこう花火をください
ひとりぼっちの私に

風が吹いていました
ひとりで歩いていました
死に忘れたトンボが一匹
石ころにつまづきました

なんでもないのに泣きました


3.加川良の手紙

作詞:加川良
作曲:吉田拓郎

拝啓 僕はとても残念でした
あの日君が ホワイト・ジーンでなかった事が
スカートもいいけれど ホワイト・ジーンなら
もっと かっこよかったと思います

あの日の映画 ダーティ・ハリーはどうでした
君はニュースの方が楽しそうだったけれど
クリント・イーストウッドっていいでしょう
こんども学割で見られたらと思います

帰りに飲んだコーヒーはおいしくなかったね
たっぷりミルクを入れたほうがよかったみたい
昨日 インスタント・コーヒーを一ビン買いました
家で飲むコーヒーって なぜ まずいんでしょう

今度お金がはいったら テレビを買おうと思います
隣の田中さんが カラー・テレビなので
深夜劇場まで見せてもらっています
でも いつまでも そうしてはいられないでしょう

田中さんの奥さんが とってもいい人で
今朝もベーコン・エッグをごちそうになりました
おかげで僕は元気です
この手紙 おお急ぎでポストに入れて来ます

そうそう まだ思い出した事がありました
僕と映画に行って コーヒーを飲んだ事を
もう お母さんは知っているのでしょうか
もう 僕の事も話したのでしょうか

バス停まで送って 帰り道に考えました
お母さんは君の話しに微笑んでくれたでしょうか
まあいいや 紙が残り少なくなりました
田中さんからも よろしくとの事でした

ごきげんよう
ごきげんよう


4.親切

作詞:吉田拓郎
作曲:吉田拓郎

いつの間にかの事だけど
君は僕と親しそうに口をきく
僕の何が欲しいのかは知らないが
君は僕の友達になってくれたんだね

そんなに時間はいらなかったよ
君が僕の家へ来るようになるまでに
何処の誰カサンから聞いたのかは知らないが
心の中にまで土足で ハイ失礼ってね

僕はまだまだ時間がいるんだよ
君の事知ってるなんて言うのもつらい
信じてますなんてとても言えないよ
言えなくなったのは、いつからかまでも忘れちまった

やさしそうな顔をして近づいて来て
手でも握って僕らは仲良しさ
やるせない位の勇気を出して
今度はどこで逢おうよなどと言ったりしてる

それ程気にしないでもいいんだよね
僕は迷惑だなんて言わないし
君は気持のいい人なんだから
そうだ、そこまで考える必要もないよね

外は毎日砂嵐で歩きにくい
口の中がザラザラで、のどもカラカラ
そんな時でも君は逢いに来てくれる
僕はカッコつけてピエロになってやるさ

面倒臭がり屋の僕なのにどうしてなんだろう、
やりきれないな
君は僕の事とても詳しく知ってるんだね
今日もまたボブ・ディランの話かい、やだね

思いがけないめぐりあわせでもないし
ただ、僕に逢いに来た時の君は
変に親切で面白い男だなと思ったし
それが今日まで友達同志とはお笑いだ

僕はその日が来るような気がする
もうゴメンだ、もうとてもじゃない
これで終りにしようとどちらが言い出すか
そう、僕は君に言ってもらえると気が楽だね

今日から僕は家にいる事にしよう
タバコの煙でもながめていよう
街は相変らずの祭ばやし
サヨナラ、君はもう背中を向けなさい

あゝ 頭の中に何ていっぱいのドラマが
皆が皆、主人公におさまっててね
もうそれも今日かぎりにしよう
サヨナラ、君の親切が 今消えた


5.夏休み

作詞:吉田拓郎
作曲:吉田拓郎

麦わら帽子は もう消えた
たんぼの蛙は もう消えた
それでも待ってる 夏休み

姉さん先生 もういない
きれいな先生 もういない
それでも待ってる 夏休み

絵日記つけてた 夏休み
花火を買ってた 夏休み
指おり待ってた 夏休み

畑のとんぼは どこ行った
あの時逃がして あげたのに
ひとりで待ってた 夏休み

西瓜を食べてた 夏休み
水まきしたっけ 夏休み
ひまわり 夕立 せみの声


6.馬

作詞:吉田拓郎
作曲:吉田拓郎

馬が走ってく 馬が走ってく
でっかい鼻の穴おっぴろげて 馬が走ってく

馬が笑ってる 馬が笑ってる
でっかい口をおっぴろげて 馬が笑ってる

馬が飛んでゆく 馬が飛んでゆく
両手両足おっぴろげて 馬が飛んでゆく

馬が手を振った 馬が手を振った
空の上からニカッと笑って 馬が手を振った

馬が歌ってる 馬が歌ってる
今日までそして明日からを 馬が歌ってる


7.たどり着いたらいつも雨降り

作詞:吉田拓郎
作曲:吉田拓郎

疲れ果てている事は
誰にも隠せはしないだろう
ところが俺らは何の為に
こんなに疲れてしまったのか

今日という日が
そんなにも大きな一日とは思わないが
それでもやっぱり考えてしまう
あゝ このけだるさは何だ

いつかは何処かへ落着こうと
心の置場を捜すだけ
たどり着いたらいつも雨降り
そんな事のくり返し

やっとこれで俺らの旅も
終ったのかと思ったら
いつもの事ではあるけれど
あゝ ここもやっぱりどしゃ降りさ

心の中に傘をさして
裸足で歩いている自分が見える

人の言葉が右の耳から左の耳へと通りすぎる
それ程頭の中はからっぽになっちまってる

今日は何故か穏やかで
知らん顔してる自分が見える


8.高円寺

作詞:吉田拓郎
作曲:吉田拓郎

君を好きだなんて言ったりすると
笑われそうな気がして
とても口に出すのがこわかったけれど
気がついてみたら 君のほうが僕を好きになっていて
それで口に出さないでもよくなったんだよ

君は何処に住んでいたのですか
高円寺じゃないよね
だって毎日電車に乗っても 違う女の子に
目移りばかり それで電車に乗るたびに
いつも色んな女の子にふられていたんだものね

君の事、好きだなんて言わないでよかったよ
電車は今日も走ってるものね


9.こっちを向いてくれ

作詞:岡本おさみ
作曲:吉田拓郎

いっしょになれないからといって
愛していなかったなんていうのは
とてもこまるんだ こっちを向いてくれ

ぼくは君を愛しているにちがいない
でも愛するってどういうことなんだろう
いま 言える事は 縛られたくないということだけさ

他人からみれば 愛しあっているようにみえて
そうなんだぼくらはキスもして
落着ける場所を 捜し続けたけど

だからと言って いっしょになるというのは
君の嫌いな者たちのいい草だったろう
ぼくはもう少し このままでいたいんだ

いっしょにすむという事が
とても気軽なのか 苦痛なのか
それは そうならなきゃ わからないにしても

いっしょになれないからといって
愛していなかったと泣いたりするのは
罪をせめられる そんな気がする

ぼくには君だけしかいないんだし
君にもぼくだけしかいないにしても
いっしょになろうよと 今は言いたくないんだ

たのむからこっちを向いてくれ
でないとこれっきりに なりそうだから
このまま別れたくないから こっちを向いてくれ


10.まにあうかもしれない

作詞:岡本おさみ
作曲:吉田拓郎

僕は僕なりに自由に振るまってきたし
僕なりに生きてきたんだと思う
だけど、だけど 理由もなく
めいった気分になるのはなぜだろう

思ってる事とやってる事の
違う事へのいらだちだったのか
だから僕は自由さをとりもどそうと
自分を軽蔑して、自分を追いこんで

なんだか自由になったように
意気がっていたのかも知れないんだ
まにあうかもしれない今なら
今の自分を捨てるのは今なんだ

まにあわせなくては今すぐ
陽気になれるだろう今なら
大切なのは思い切ること
大切なのは捨て去ること

そうすりゃ自由になれるなんて
思っている程甘くはないけれど
だけど今は捨て去ることで
少し位はよくなると思えるんだ

まにあうかもしれない今なら
まにあうかもしれない今すぐ

なんだか自由になったように
意気がっていたのかも知れないんだ
まにあうかもしれない今なら
今の自分を捨てるのは今なんだ


11.リンゴ

作詞:岡本おさみ
作曲:吉田拓郎

ひとつのリンゴを君がふたつに切る
ぼくの方が少し大きく切ってある
そして二人で仲良くかじる
こんなことはなかった少し前までは
薄汚れた喫茶店のバネの壊れた椅子で
長い話に相槌うって
そしていつも右と左に別れて

このリンゴは昨日二人で買ったもの
ぼくの方がお金を出して
おつりは君がもらって
こんなことはなかった少し前までは
コーヒーカップはいつだって二つ運ばれてきて
向こうとこちらに、ウエイトレスは
さりげなくカップをわけて

ふたつめのリンゴの皮を君が剥く
ぼくの方が巧く剥けるのを君はよく知ってるけど
リンゴを強く齧る、甘い汁が唇をぬらす
左の頬を君はぷくんとふくらませて
欲張ってほおばると
ほらほら 話せなくなっちまうだろう


12.また会おう

作詞:岡本おさみ
作曲:吉田拓郎

きれいに裏切ろう
あいつが信じきってる
そのうしろの肩に無言の斧を打ちこみ

あゝ でも今日も一日
裏切れなかった

身に覚えがあるだろう
女さえ抱けずに
だからさ こうして裏町の酒場はいつも
正直な男たちでいっぱい

きみ Ha
もう いっぱい!

戦争もありふれてる
ぼくらは知りすぎてる
なぜ人が人を殺し合うのかもね

あゝ でも今日も一日
殺すなんてとても

憎い奴もいるのにね
怒りを流しこみ
だからさ おなじみの裏町の酒場は
正直な男たちでいっぱい

帰るのかい
また会おう!


13.旅の宿(アルバム・バージョン)

作詞:岡本おさみ
作曲:吉田拓郎

浴衣のきみは尾花の簪
熱燗徳利の首つまんで
もういっぱいいかがなんて
みょうに色っぽいね

ぼくはぼくで趺坐をかいて
きみの頬と耳はまっかっか
ああ風流だなんて
ひとつ俳句でもひねって

部屋の灯をすっかり消して
風呂あがりの髪いい香り
上弦の月だったっけ
ひさしぶりだね
月みるなんて

ぼくはすっかり酔っちまって
きみの膝枕にうっとり
もう飲みすぎちまって
きみを抱く気にもなれないみたい


14.祭りのあと

作詞:岡本おさみ
作曲:吉田拓郎

祭りのあとの淋しさが
いやでもやってくるのなら
祭りのあとの淋しさは
たとえば女でまぎらわし
もう帰ろう、もう帰ってしまおう
寝静まった街を抜けて

人を怨むも恥ずかしく
人をほめるも恥ずかしく
なんのために憎むのか
なんの怨みで憎むのか
もう眠ろう、もう眠ってしまおう
臥待月の出るまでは

日々を慰安が吹き荒れて
帰ってゆける場所がない
日々を慰安が吹きぬけて
死んでしまうに早すぎる
もう笑おう、もう笑ってしまおう
昨日の夢は冗談だったんだと

祭りのあとの淋しさは
死んだ女にくれてやろう
祭りのあとの淋しさは
死んだ男にくれてやろう
もう怨むまい、もう怨むのはよそう
今宵の酒に酔いしれて

もう怨むまい、もう怨むのはよそう
今宵の酒に酔いしれて


注意:三連目“日々を慰安が吹き荒れて”は、
吉野弘氏の詩の一行を借りました。


15.ガラスの言葉

作詞:及川恒平
作曲:吉田拓郎

笑ってるよ 白いワンピースの
長い髪に落ちてゆく影
それは誰ですか

ふと止る 鉛筆の中から
まっさらな日記帳に落ちてゆく影
それは誰ですか

ガラスの言葉が眠ってる
遠いあの日の遠いあの街

今晩わ、何処へゆく風
ミルキー・ウエイに花が
ほら、あんなにいっぱい
ほら、揺れてるよ

風が吹いているその時
風を見ていたその瞳
それは誰ですか

食べかけのチョコレートから
おしあわせにと落ちてゆく影
それは誰ですか

ガラスの言葉が眠ってる
遠いあの日の遠いあの街

今晩わ、何処へゆく風
ミルキー・ウエイに花が
ほら、あんなにいっぱい
ほら、揺れてるよ