月夜のカヌー

吉田拓郎 月夜のカヌー歌詞
1.花の店

作詞:岡本おさみ
作曲:吉田拓郎

なだらかな坂の途中
花の店がある
長い雨もあがったらしい
淡い光がさしてきた

ぼくはいつも窓側の
同じ椅子に座り
コーヒーなど飲みながら
店の方を見ている

恋人らしく、はなやぐふたり
内気そうな少女もいて
花の店は坂の途中
花の店は坂の途中

夕陽射す、ビルの谷間
花の店の前
なぜか人は立ち止まって
ほほえみながら花を見る

春は春の花々が
彩りをそえて
訪れる人も流れながら
また、変わってゆく

照れくさそうな男たちや
杖をついた老人もくる
花の店は坂の途中
花の店は坂の途中

ぼくはいつも窓側の
同じ椅子に座る
誰か先に居るときは
またあとで、といって

季節の風を、身体に感じ
それからまた、いつもの椅子に
花の店は坂の途中
花の店は坂の途中


2.少女よ、眠れ

作詞:岡本おさみ
作曲:吉田拓郎

人ごみがとぎれてる裏通りで
携帯電話をにぎった少女の
栗色の長い髪がゆれてる

午前0時をすぎてるよ
最終はまだあるさ
もの欲しげな視線の中
親はいるんだろ、家も

今夜、なにかに夢中になれたかい
眠りは君を、きれいにするだろう
なにをいっても、うるさいだろうけど
ケガしないうちに、もう、帰ったほうがいい

静けさのなかでは落ち着かない
さびしさ隠して、はしゃぐ少女の
あどけない瞳はなにを見つめてる

楽しければ、それだけで
満足だというんだね
その若さが、まぶしいほど
時を輝かせる、けれど

今夜、なにかに夢中になれたかい
眠りが君を、きれいにするだろう
なにをいっても、うるさいだろうけど
ケガしないうちに、もう、帰ったほうがいい

コンクリートを積み上げた街角で
少女の白い素足と微笑は
可憐な花のように、はかなすぎて

笑い転げて、気が抜けて
道端にしゃがみこみ
そのやさしさ、すりへらして
夜に座りこむ いつも

今夜、なにかに夢中になれたかい
眠りは君を、きれいにするだろう
なにをいっても、うるさいだろうけど
ケガしないうちに、もう、帰ったほうがいい

今夜、なにかに夢中になれたかい
眠りが君を、きれいにするだろう
なにをいっても、うるさいだろうけど
ケガしないうちに、もう、帰ったほうがいい


3.聖なる場所に祝福を

作詞:岡本おさみ
作曲:吉田拓郎

ああ、この至福の時が
いつまで、続けばいい
ああ、きみの夢と
ぼくのたどった夢が
出会ったような気がするよ

今、この魂のすべてを燃やした
この時に祝福を
聖なる場所に祝福を

ああ、この希望の酒を
喉に注ぎこもう
ああ、ぼくの夢が
やがて消え去る前に
再び燃やす、そのために

今、この魂のすべてを燃やした
この時に祝福を
聖なる場所に祝福を

ああ、この一夜の夢を
酔って、語りあおう
ああ、心ほぐし
身体ゆだねた夜に
見果てぬ夢をたどろうか

今、この魂のすべてを燃やした
この時に祝福を
聖なる場所に祝福を
聖なる場所に祝福を


4.流星2003


5.星降る夜の旅人は

作詞:岡本おさみ
作曲:吉田拓郎

星降る夜の旅人は
今頃どこで眠るやら
土のベットで寝返りを
それとも草の露にぬれ

もしも もしも、景色に飽きたなら
足を速めてみるもいい

星降る夜の旅人が
くちずさむのはどんな歌
取り残された幼子が
涙こらえてうたう歌

もしも もしも、夜風になれるなら
草笛鳴らしてあげようか

星降る夜の旅人が
見ている月は、どんな月
故郷で待つ恋人の
やせた三日月 立ち姿

もしも もしも、手紙を書いたなら
すぐに届けてあげるのに

もしも もしも、手紙を書いたなら
すぐに届けてあげるのに


6.月夜のカヌー

作詞:岡本おさみ
作曲:吉田拓郎

話すことはいつも他愛ない
話しすぎて疲れてる
憂鬱のわけも気づかずに
魂の岸辺に寝転んで

月夜のカヌーで
夢のつづきへ、漕ぎ出そう
月夜のカヌーで
息をひそめ、漕ぎ出よう

冬の空で光る星屑に
指をのばす、触れたくて
とどかない恋に疲れても
思い出の窓辺で嘆くなよ

月夜のカヌーで
夢のつづきへ、漕ぎ出そう
月夜のカヌーで
息をひそめ、漕ぎ出よう

老いた人が、揺れて漂うのは
家族の船 暗い海
かすかな光を輝かせ
まなざし燃え尽き、閉ざすまで

月夜のカヌーで
夢のつづきへ、漕ぎ出そう
月夜のカヌーで
息をひそめ、漕ぎ出そう

月夜のカヌーで
夢のつづきへ、漕ぎ出よう
月夜のカヌーで
息をひそめ、漕ぎ出よう


7.春よ、こい

作詞:岡本おさみ
作曲:吉田拓郎

冬になると
旅の支度をするんだね
どこへ行くんだい?
去り行くものたちよ

変わり続けてきた
いさぎよく捨ててきた
なのに、なぜ、さびしがらせる
春よ、来い

別れ歌が
胸にしみてゆくように
なぜに、迷わせる
去り行くものたちよ

生きて、ここまで来た
いさぎよく生きてきた
なのに、なぜ、さびしがらせる
春よ、来い

雨に濡れた
冷えた季節も飛び出した
身体、ほてらせ
去り行くものたちよ

好きで、好きでやってきた
いさぎよく惚れてきた
なのに、なぜ、さびしがらせる
春よ、来い
春よ、来い


8.白いレースの日傘

作詞:岡本おさみ
作曲:吉田拓郎

きみが波と遊んでるのを
ねころびながら、ぼくは見ている
長い波が膝まで寄せるので
きみは声をあげ、転びそうになる

ふたりの夏がもう、帰ってこないことを
ぼくらは知ってる、秋がおだやかなことも
もしも、求めなければ

きみの白いレースの日傘
まわしてみれば、フリルが揺れる
てれくさいけど、なぜか暖かく
傘の中には若いきみがいる

ふたりの暮らし、あの心にひそむことも
すべてを知ってる、秋がやすらかなことも
そうさ、ゆずりあえれば

鳥の形、翼ひろげて
飛び立つしぐさで、きみが誘う
ぼくは靴と靴下、脱ぎすてて
ふたりの影だけ、夏に歩き出す

陽射しを浴びながら、日傘が風に揺れる
ふたりの影と空、日傘が風に揺れる

ぼくらは思い出たちを、語り出すのさ
そうさ、夏のことばで


9.ときめく時は

作詞:岡本おさみ
作曲:吉田拓郎

うつむいて
心、曇らせるきみの
横顔を見ていると
そんなこともあるよねと
言えなくて、言えなくて
ことばをさがしてしまう

微笑んでくれ、やわらかい頬で
あの頃のぼくたちの
ときめく時は過ぎていても

また春が
芽吹く樹々たちと花が
街角をうるおして
そんなこともあったねと
言える日が、言える日が
必ず、必ず、来るよ

照れくさいけど、指先をからめ
あの頃のぼくたちの
ときめく時は過ぎていても

微笑んでくれ、やわらかい頬で
あの頃のぼくたちの
ときめく時は過ぎていても


10.人間の「い」

作詞:吉田拓郎
作曲:吉田拓郎

じれったい 抱きしめたい
うしろめたい いとおしい
許せない いくじがない
信じていたい 心地よい

ぎこちない 口づけたい
やりきれない にべもない
おこがましい 味気ない
あられもない いさぎ良い

冗談じゃない うばいたい
つめが甘い 人がいい
やぶさかでない うかがいたい
正直じゃない もどかしい

それが欲しい
それがしたい
それが 望まし うらやまし
はしたない 恩きせがましい
それが恥ずかし おくゆかし
人間の「い」
僕達の「い」
いつだって「い」
これからも「い」

さりげない 結ばれたい
ふがいない そつがない
みもふたもない いじらしい
とりとめもない 古くさい

そそっかしい 離れたい
そこはかとない ういういしい
喜ばしい たわいない
てっとり早い つつがない

いさぎよい しらじらしい
心もとない こそばゆい
理屈っぽい つまらない
長ったらしい ゆるぎない

まわりくどい おぞましい
まぎらわしい ありがたい
ふてぶてしい きなくさい
残り少ない 生きてたい

それが欲しい
それがしたい
それが 望まし うらやまし
はしたない 恩きせがましい
それが恥ずかし おくゆかし
人間の「い」
僕達の「い」
いつだって「い」
これからも「い」

人間の「い」
僕達の「い」
永遠の「い」
命がけの「い」