全曲集

夏木綾子 全曲集歌詞
1.ひとり日本海

作詞:瀬戸内かおる
作曲:岸本健介

泣き濡れて ひとり桟橋
あなた私が 見えますか
凍てつく風に 羽根震わせて
朝を待てずに 鳴くかもめ
あゝあなた…あなた
寒いこの胸 抱きに来て
ヒュルル ヒュルル ヒュルルルルルル
おんなひとりの 日本海

悲しみの 色に染まって
北の岬は 冬篭(ごも)り
浪打ち際に 咲く水仙は
まるで私の ようですね
あゝ愛が…愛が
風にまかれて 散り急ぐ
ヒュルル ヒュルル ヒュルルルルルル
あなた恋しい 日本海

あの人と そうよふたりで
いつか旅する はずでした
はぐれてひとり 訪ねた港町(まち)は
哭けとばかりに 風が吹く
あゝ明日は…明日は
私どの港町(まち) 辿り着く
ヒュルル ヒュルル ヒュルルルルルル
おんなひとりの 日本海


2.涙ひとすじ

作詞:田村和男
作曲:岸本健介

傘のしずくを 振り切るように
みれん捨てたい 駅裏酒場
雨が想い出 連れてくる
泣かせないでね もうこれ以上
憎さ一分で 恋しさ九分
涙ひとすじ おんなの未練

夢の止まり木 いつでもわたし
探しつづけて いたのねきっと
言って心を なぐさめる
泣かせないでね もうこれ以上
風の噂に 今夜も泣いて
涙ひとすじ おんなの未練

店に流れる 流行歌(はやり)の有線(うた)は
振られ上手な 恋歌ばかり
そうよ私も 振られ癖
泣かせないでね もうこれ以上
あなたやさしい 想い出ばかり
涙ひとすじ おんなの未練


3.愛ふたりづれ

作詞:瀬戸内かおる
作曲:岸本健介

肩にかくれて 涕(な)いたらいいと
そっと私を 抱いた人
つらい昨日は ふりむかないわ
やっとあなたに 逢えました
こんな私で いいですか
夢のつづきじゃ ないですね
愛はひとすじ あなたと生きる

俺のあとから はぐれぬように
ついておいでと 涕(な)かす人
涕(な)いたおんなの 悲しい過去に
灯すやさしい 恋灯り
あなた私の 道標
ついて行きます どこまでも
愛はひとすじ あなたと生きる

俺とこれから この先ずっと
ふたり死ぬまで いっしょだよ
そんな言葉に 涙がほろり
嬉し涙を 知りました
つらい涙は 今日かぎり
捨ててあなたと ふたりづれ
愛はひとすじ あなたと生きる


4.晩愁海峡

作詞:瀬戸内かおる
作曲:岸本健介

冬の身支度 急かせるように
晩秋のしぐれが
港桟橋駆け抜ける
すがる胸さえ…
別れ言葉も ないままに
あなた海峡 波の上
汽笛が鳴けば 鴎も啼いて
あの人連れてゆく

海は荒波 群れ飛ぶ鴎
北のはずれの
一夜泊まりの風港
ここで暮らすと…
云ったあの夜の 腕まくら
夢の破片が 波に散る
汽笛が鳴けば 鴎も啼いて
あの人連れてゆく

恋は引き潮 慕いは満ちて
遠くなるほど
あなた恋しさ増すばかり
はるか海峡…
追って行きたい 行かれない
私悲しい 恋小舟
汽笛が鳴けば 鴎も啼いて
あの人連れてゆく


5.春花しぐれ

作詞:瀬戸内かおる
作曲:浜田清人

春よ春よ ふたりの春よ来い
寒い北風 飛んで行け
街の片隅 寄り添って
ふたりあなたと 探します
何処にしあわせ かくれんぼ
肩に降れ降れ 春花しぐれ

いつかいつか ひだまり連れて来い
薄いひざしの この街に
明日のふたりを 気づかって
背なを後押す 春の風
そんな優しい 春が好き
肩に降れ降れ 春花しぐれ

夢が夢が ふたりにある限り
冬は必ず 春となる
こんなつましい 窓辺にも
春の足音 聞こえます
ついてゆきます 行かせてね
肩に降れ降れ 春花しぐれ


6.雨の屋台酒


7.夜叉の河

作詞:瀬戸内かおる
作曲:岸本健介

闇を貫き 火柱が
夜空焦して 河となる
渡り切るには 橋がない
船を出すにも 櫂がない
あゝここは情炎 恋地獄
炎渦巻く 恋の河
あゝ倫(みち)に背いた 報いなら
石の礫(つぶて)も 受けましょう
それもいい それもいい
何処へ流れる 夜叉の河

明日がなくても いいのです
あれば命を 惜しみます
恋の成就の からくりを
誰が操る 赤い糸
あゝあれは満天 星銀河
連れて行ってよ ついて行く
あゝそれが叶わぬ 恋ならば
墜ちて行きましょう 何処までも
それもいい それもいい
ふたり流れる 夜叉の河

あゝあれは満天 星銀河
連れて行ってよ ついて行く
あゝそれが叶わぬ 恋ならば
墜ちて行きましょう 何処までも
それもいい それもいい
ふたり流れる 夜叉の河


8.越冬譜

作詞:石本美由起
作曲:岸本健介

船をおりたら さい果て行きの
汽車が待ってる 港駅
風が哭く 恋が哭く
はぐれ鴎の私には
返る塒も 帰る塒も 胸もない…

春はどこやら 未練がつのる
こころ凍れる 雪景色
雪が舞う 闇に舞う
遠くなるほど 面影は
夢で泣くなと 夢で泣くなと 逢いにくる…

うしろ髪引く 思い出荷物
どこに捨てよか 港宿
夢が散る 乱れ散る
生きて逢う日の ない恋は
北の吹雪に 北の吹雪に 埋めたい…


9.しかたないよね

作詞:岸本健介
作曲:岸本健介

荒れた生活を そうさあの頃
おまえに会うまで していたよ
おまえに出会えて ほんとによかった
あんたいつか 言ってたね

淋しいよ 淋しいよ
ヨコハマ シーサイドブルース
帰るあてない あんたを待って
グラス揺らせば 泣く氷
しかたないよね しかたないよね
やっぱりあんたが 好きだから

セピア色した 想い出だけに
生きてくなんて 哀しいね
眠りつけずに 湾岸走れば
つばさ橋から 翔ぶ鴎

会いたいよ 会いたいよ
ヨコハマ シーサイドブルース
私翔べない 鴎のように
今も この横浜で 暮らしてる
しかたないよね しかたないよね
やっぱりあんたが 好きだから

会いたいよ 会いたいよ
ヨコハマ シーサイドブルース
私翔べない 鴎のように
今も この横浜で 暮らしてる
しかたないよね しかたねいよね
やっぱりあんたが 好きだから


10.恋夜酒

作詞:田村和男
作曲:岸本健介

せめて一夜の夢でもいいの
酔ってあなたに 甘えたい 甘えたい
つくしてもああ つくしても
つくし足りないわ
恋は瑠璃いろ 心は涙いろ
わたしひとりよ ねえ あなた 恋夜酒

心づくしの 手料理ならべ
待てばせつない 雨の音 雨の音
あの人は ああ あの人は
どこで雨やどり
恋は瑠璃いろ 心は涙いろ
ついでつがれる人もない 恋夜酒

肌の寒さは あなたのせいよ
すがるお酒の ほろにがさ ほろにがさ
酔えないわ ああ 酔えないわ
ひとりまよい酒
恋は瑠璃いろ 心は涙いろ
抱いて下さいもう一度 恋夜酒


11.おんな夢街道

作詞:田村和男
作曲:岸本健介

上を見たなら きりがない
下を見たなら 夢がない
こゝで負けたら 明日は来ない
ぐっと我慢の しどころと
つらい思いは 飲みこんで
苦労七坂 ヨイショと越える
おんな人生 夢街道

たとえ路傍の 花でいゝ
花と咲きたい いつの日か
雨や嵐に 晒されたって
紅の一刷毛 忘れずに
咲いてみせます おんな花
涙ふりすて ヨイショと越える
おんな人生 夢街道

おんなだてらと 言われても
意地もあります 夢もある
忍の一文字 こゝろに抱いて
向い風さえ 追い風に
変えてみせます 心意気
笑顔千両で ヨイショと越える
おんな人生 夢街道


12.大阪夢情

作詞:岸本健介
作曲:岸本健介

雨にけむった 道頓堀は
赤い灯青い灯 映す女の涙川
あほや… あほやね
女のみれん
待って 待って
待って甲斐ない人やのに
雨よ泣かすな 大阪夢情

お初天神 相合傘で
寄り添いあんたと
引いたおみくじ枝で泣く
あほや… あほやね
女のみれん
泣いて 泣いて
泣いてすがれる胸もない
消えてはかない 大阪夢情

空を見上げりゃ 通天閣が
泣いたらアカンと
うちの心に灯をともす
あほや… あほやね
女のみれん
夢で 夢で
夢でいいからもう一度
あんた逢いたい 大阪夢情


13.おんな夢太鼓

作詞:田村和男
作曲:岸本健介

天にとどろけ 大地にひびけ
祇園太鼓の 幕が開く
男まさりの バチさばき
見せてやろうか みだれ打ち
これがおんなの これがおんなの
夢太鼓

巻いた晒は 伊達ではないよ
咲いて今宵は 華になる
ここがおんなの 見せどころ
ヤッサヤレヤレ 晴れ舞台
これがおんなの これがおんなの
夢太鼓

憂き世 嵐を 踏み越えながら
生きるおんなの こころ意気
小倉生れの 純情は
叩く太鼓の 音に出る
これがおんなの これがおんなの
夢太鼓


14.酒しずく

作詞:石本美由起
作曲:岸本健介

恋が男の 芝居なら
女泣かせて 幕になる
死ぬにゃ死なれず 忘れも出来ず
あなた 恋しい 雨の居酒屋
未練しとしと 酒しずく

口にふくんだ 酒だけが
泣ける心を なぐさめる
酒よ今夜は 酔わせて欲しい
あなた 恋しい 愚痴の捨て場所
おちょこ相手に ひとり言

いつも女の 身の上は
男次第で 変わるもの
二度と逢えない 運命でしょうか
あなた恋しい 肌の寒さよ
涙まじりの 酒しずく


15.夫婦きずな

作詞:田村和男
作曲:岸本健介

熱燗一本 笑顔を添えて
ほろり酔わせる…
そんなおまえがいとしいよ
すまないね すまないね
こんなつましい世帯でも
愚痴もこぼさずついてくる
惚れたおまえにまた惚れた

まわり道してつまずいたって
いいじゃないのよ…
それもこの世のかくし味
うれしいね うれしいね
俺のこころを引きたてる
薄いちいさな その肩に
積る苦労も あるだろに

ひと間ぐらしも一輪差しの
花を飾れば…
春が来たのとはしゃぐやつ
すまないね すまないね
夫婦きずなの 結びめに
点る小さな 夢灯り
待っていてくれ惚れ女房


16.浪花の母

作詞:泉俊輔・岸本健介
作曲:岸本健介

女房子供を 泣かせるような
そんな亭主は いらんとゆうて
辛い涙を 笑顔に隠し
屋台ひきひき 帰り道
通天閣見上げて 言わはった
浪花の母ごころ

(セリフ)お母ちゃんの口ぐせやった。
「男やったら通天閣みたいに、ドーンとかまえて
天下取る気できばらなあかん
そやけど女は違うで・・・好きな人に可愛いがってもろて、
一生添いとげる、これが一番幸せなんや・・
お母ちゃんのまねせんといてな。」

私のこの手で お母ちゃんだけは
何が何でも守ってみせる
やっと苦労が 花咲きかけて
母娘暖簾を 出せました
道頓堀あたりに ゆれている
浪花の夢あかり

(セリフ)元気だけが取り柄やゆうてた、お母ちゃんが
ほんま あっけのう逝ってしまはった。
苦しい息の中「あんなお父ちゃんやったけど、
お父ちゃんにはお父ちゃんなりの夢があったんや。
それをわかってあげへんかったお母ちゃんも悪かったんや
あんたに淋しい思いさしたなぁ・・・許してな。」
そうゆうてこぼさはったお母ちゃんの涙は忘れへん。

情に泣いても 貧乏に泣くな
母の教えが こころの支え
今日は泣いても 泣いてもええか
両手合わせる ご命日
お母ちゃん見ててや 私のこと
浪花で生きてゆく