懐メロを歌う・ベスト40

石原裕次郎 懐メロを歌う・ベスト40歌詞
1.影を慕いて

作詞:古賀政男
作曲:古賀政男

まぼろしの
影を慕いて 雨に日に
月にやるせぬ 我が想い
つつめば燃ゆる 胸の火に
身は焦れつつ しのび泣く

わびしさよ
せめて痛みの なぐさめに
ギターをとりて 爪弾けば
どこまで時雨 ゆく秋ぞ
トレモロさびし 身は悲し

君故に
永き人生(ひとよ)を 霜枯れて
永遠に春見ぬ 我がさだめ
永ろうべきか 空蝉の
儚き影よ 我が恋よ


2.人生の並木路

作詞:佐藤惣之助
作曲:古賀政男

泣くな妹よ 妹よ泣くな
泣けばおさない 二人して
故郷をすてた かいがない

遠いさびしい 日暮の路で
泣いてしかった 兄さんの
涙の声を わすれたか

雪も降れ降れ 夜路のはても
やがてかがやく あけぼのに
わが世の春は きっと来る

生きてゆこうよ 希望に燃えて
愛の口笛 高らかに
この人生の 並木路


3.港が見える丘

作詞:東辰三
作曲:東辰三

あなたと二人で来た丘は
港が見える丘
色あせた桜唯一つ
淋しく咲いていた
船の汽笛咽び泣けば
チラリホラリと花片
あなたと私に降りかかる
春の午後でした

あなたと別れたあの夜は
港が暗い夜
青白い灯り唯一つ
桜を照らしてた
船の汽笛消えて行けば
キラリチラリと花片
涙の雫できらめいた
霧の夜でした


4.懐しのブルース

作詞:藤浦洸
作曲:万城目正

古い日記の ページには
涙のあとも そのままに
かえらぬ夢の なつかしく
頬すり寄せる わびしさよ
あゝ 懐しのブルースは
涙にぬれて 歌う唄

ひとつ浮雲 夜の空
何故にか胸に しみじみと
思い出遠く ながれ行く
心にも似た かなしさよ
あゝ 懐しのブルースは
ひとりさびしく 歌う唄

重く悲しい 歌なれど
生きて行く身の つれづれに
夕闇遠い 行末の
のぞみはかなく くちづさむ
あゝ 懐しのブルースは
この世の夢を 歌う唄


5.東京ラプソディー

作詞:門田ゆたか
作曲:古賀政男

花咲き花散る宵も
銀座の柳の下で
待つは君ひとり 君ひとり
逢えば行く ティールーム
楽し都 恋の都
夢の楽園(パラダイス)よ 花の東京

現(うつつ)に夢見る君の
神田は想い出の街
今もこの胸に この胸に
ニコライの 鐘も鳴る
楽し都 恋の都
夢の楽園(パラダイス)よ 花の東京

明けても暮れても唄う
ジャズの浅草行けば
恋の踊り子の 踊り子の
黒子(ほくろ)さえ 忘られぬ
楽し都 恋の都
夢の楽園(パラダイス)よ 花の東京

夜更けにひととき寄せて
なまめく新宿駅の
あの娘はダンサーか ダンサーか
気にかかる あの指環
楽し都 恋の都
夢の楽園(パラダイス)よ 花の東京


6.君待てども

作詞:東辰三
作曲:東辰三

君待てども 君待てども
まだ来ぬ宵 わびしき宵
窓辺の花 一つの花
蒼白きバラ
いとしその面影 香り今は失せぬ
あきらめましょう あきらめましょう
わたしはひとり

君待てども 君待てども
まだ来ぬ宵 おぼろの宵
そよ吹く風 つめたき風
そぞろ身にしむ
待つ人の影なく 花片は舞い来る
あきらめましょう あきらめましょう
わたしはひとり

君待てども 君待てども
まだ来ぬ宵 嘆きの宵
そぼ降る雨 つれなき雨
涙にうるむ
待つひとの音なく 刻む雨の雫
あきらめましょう あきらめましょう
わたしはひとり


7.雨に咲く花

作詞:高橋掬太郎
作曲:池田不二男

およばぬことと 諦めました
だけど恋しい あの人よ
儘になるなら いま一度
ひと目だけでも 逢いたいの

別れた人を 思えばかなし
呼んでみたとて 遠い空
雨に打たれて 咲いている
花があたしの 恋かしら

はかない夢に すぎないけれど
忘れられない あの人よ
窓に涙の セレナーデ
ひとり泣くのよ むせぶのよ


8.白い花の咲く頃

作詞:寺尾智沙
作曲:田村しげる

白い花が咲いてた
ふるさとの とおい夢の日
さよなら と云ったら
だまってうつむいてた お下髪
かなしかった あの時の
あの白い花だよ

白い雲が浮いてた
ふるさとの 高いあの峰
さよなら と云ったら
こだまがさようならと 呼んでいた
さみしかった あの時の
あの白い雲だよ

白い月が哭いてた
ふるさとの 丘の木立ちに
さよなら と云ったら
涙の眸でじっと みつめてた
かなしかった あの時の
あの白い月だよ


9.水色のワルツ

作詞:藤浦洸
作曲:高木東六

君に逢ううれしさの 胸にふかく
水色のハンカチを ひそめる習慣(ならわし)が
いつの間にか 身に沁みたのよ
涙のあとをそっと 隠したいのよ

月影の細路を 歩きながら
水色のハンカチに 包んだ囁きが
いつの間にか 夜露にぬれて
心の窓をとじて 忍び泣くのよ


10.雨のブルース

作詞:野川香文
作曲:服部良一

雨よふれふれ
なやみを 流すまで
どうせ涙に 濡れつつ
夜毎 なげく身は
あゝ かえり来ぬ 心の青空
すすり泣く 夜の雨よ

くらい運命に
うらぶれ果てし 身は
夜の夜路を とぼとぼ
ひとり さまよえど
あゝ かえり来ぬ 心の青空
ふりしきる 夜の雨よ


11.上海ブルース

作詞:島田磬也
作曲:大久保徳二郎

涙ぐんでる 上海の
夢の四馬路(スマロ)の 街の灯
リラの花散る 今宵は
君を想い出す
何んにも言わずに 別れたね
君と僕
ガアデンブリッヂ 誰と見る青い月

甘く悲しい ブルースに
なぜか忘れぬ 面影
波よ荒れるな 碼頭(はとば)の
月もエトランゼ
二度とは逢えない 別れたら
あの瞳
想いは乱れる 上海の月の下


12.君忘れじのブルース

作詞:大高ひさを
作曲:長津義司

雨ふれば 雨に泣き
風ふけば 風に泣き
そっと夜更けの 窓をあけて
歌う女の 心は一つ
あゝ せつなくも せつなくも
君を忘れじのブルースよ

面かげを 抱きしめて
狂おしの いく夜ごと
どうせ帰らぬ 人と知れど
女ごころは 命も夢も
あゝ とこしえに とこしえに
君を忘れじのブルースよ


13.君恋し

作詞:時雨音羽
作曲:佐々紅華

宵やみせまれば 悩みは果なし
みだるる心に うつるは誰がかげ
君恋し くちびるあせねど
涙はあふれて 今宵もふけゆく

歌ごえすぎ行き 足音ひびけど
いずこに尋ねん 心の面影
君恋し 思いはみだれて
苦しき幾夜を 誰がためしのばん

去りゆくあの影 消えゆくあの影
誰がため支えん つかれし心よ
君恋し ともしびうすれて
臙脂(えんじ)の紅帯 ゆるむもさびしや


14.青い背広で

作詞:佐藤惣之助
作曲:古賀政男

青い背広で こころも軽く
街へあの娘と 行こうじゃないか
紅い椿で ひとみも濡れる
若い僕等の 生命の春よ

お茶を飲んでも ニュースを見ても
純なあの娘は 仏蘭西(フランス)人形
夢を見るよな 泣きたいような
長いまつげの 可愛い乙女

今夜言おうか 打ち明けようか
いっそこのまま 諦めましょか
甘い夜風が とろりと吹いて
月も青春 泣きたい心

駅で別れて ひとりになって
あとは僕等の 自由な天地
涙ぐみつつ 朗らに唄う
愛と恋との ひと夜の哀歌


15.或る雨の午后

作詞:島田磬也
作曲:大久保徳二郎

雨が降ってた しとしとと
或る日の午后の ことだった
君と僕とは 寄り添って
雨の舗道を 濡れながら
二人愉(たの)しく 歩いたね

雨に濡れても 二人きり
或る日の午后の ことだった
肩を並べて 寄せ合って
話し疲れて どこまでも
二人黙って 歩いたね

雨が降ってる 今日もまた
或る日の午后を 想い出す
君と僕とは 別れたが
雨の舗道を 濡れながら
一人黙って 歩こうよ


16.月がとっても青いから

作詞:清水みのる
作曲:陸奥明

月がとっても 青いから
遠廻りして 帰ろう
あの鈴懸の 並木路は
想い出の 小径よ
腕を優しく 組み合って
二人っきりで サ、帰ろう

月の雫に 濡れながら
遠廻りして 帰ろう
ふとゆきずりに 知り合った
想い出の この径
夢をいとしく 抱きしめて
二人っきりで サ、帰ろう

月もあんなに うるむから
遠廻りして 帰ろう
もう今日かぎり 逢えぬとも
想い出は 捨てずに
君と誓った 並木みち
二人っきりで サ、帰ろう


17.別れの磯千鳥

作詞:福山たか子
作曲:フランシスコ座波

逢うが別れの はじめとは
知らぬ私じゃ ないけれど
せつなく残る この思い
知っているのは 磯千鳥

泣いてくれるな そよ風よ
希望(のぞみ)抱いた あの人に
晴れの笑顔が 何故悲し
沖のかもめも 涙声

希望の船よ ドラの音に
いとしあなたの 面影が
はるか彼方に 消えて行く
青い空には 黒けむり
黒けむり…


18.無情の夢

作詞:佐伯孝夫
作曲:佐々木俊一

あきらめましょうと 別れてみたが
何で忘りょう 忘らりょか
命をかけた 恋じゃもの
燃えて身をやく 恋ごころ

喜び去りて 残るは涙
何で生きよう 生きらりょか
身も世も捨てた 恋じゃもの
花にそむいて 男泣き


19.ダイナ/DINAH

作詞:S.M.LEWIS・J.YOUNG
作曲:H.AKST

おゝダイナ 私の恋人 胸にえがくは
美わしき姿 おゝベイビー
ダイナ… 紅き唇
我に囁け 愛の言葉を
あゝ夜毎君の瞳
慕わしく 想い狂わしく
おゝダイナ… 許せよくちづけ
我が胸ふるえる 私のダイナ

おゝダイナ 私の恋人 胸にえがくは
美わしき姿 おゝベイビー
ダイナ… 紅き唇
我に囁け 愛の言葉を
あゝ夜毎君の瞳
慕わしく 想い狂わしく
おゝダイナ… 許せよくちづけ
我が胸ふるえる 私のダイナ
オーマイダイナリー


20.別れのタンゴ

作詞:藤浦洸
作曲:万城目正

別れの言葉は 小雨の花か
「さようなら」と 濡れて散る
あつい情に 泣いたあの夜も
はかない ひと夜のつゆか

あふるる涙に 夜空がうつる
「さようなら」と 流れ星
恋のアルバム ひとりひらけば
わびしや まぶたはくもる

あの日の言葉を ひそめて抱いて
「さようなら」と また歌う
恋のなごりに 胸をやく身の
いとしや 別れのタンゴ


21.裏町人生

作詞:島田磬也
作曲:阿部武雄

暗い浮世の この裏町を
のぞくつめたい こぼれ灯よ
なまじかけるな 薄情け
夢も侘しい 夜の花

誰に踏まれて 咲こうと散ろと
いらぬお世話さ ほっときな
渡る世間を 舌打ちで
拗ねた私が 何故悪い

霧の深さに かくれて泣いた
夢が一つの 思い出さ
泣いて泪が かれたなら
明日の光を 胸に抱く


22.国境の町

作詞:大木惇夫
作曲:阿部武雄

橇(そり)の鈴さえ 寂しく響く
雪の曠野よ 町の灯よ
一つ山越しゃ 他国の星が
凍りつくよな国境

故郷はなれて はるばる千里
なんで想いが とどこうぞ
遠きあの空 つくづく眺め
男泣きする宵もある

明日に望みが ないではないが
頼み少ない ただ一人
赤い夕陽も 身につまされて
泣くが無理かよ渡り鳥

行方知らない さすらい暮し
空も灰色 また吹雪
想いばかりが ただただ燃えて
君と逢うのは いつの日ぞ


23.酒は涙か溜息か

作詞:高橋掬太郎
作曲:古賀政男

酒は涙か 溜息か
こころのうさの 捨てどころ

とおいえにしの かの人に
夜毎の夢の 切なさよ

酒は涙か 溜息か
かなしい恋の 捨てどころ

忘れた筈の かの人に
のこる心を なんとしょう


24.星の流れに

作詞:清水みのる
作曲:利根一郎

星の流れに 身を占って
何処をねぐらの 今日の宿
荒む心で いるのじゃないが
泣けて涙も 涸れ果てた
こんな女に誰がした

煙草ふかして 口笛ふいて
的もない夜の さすらいに
人は見返る わが身は細る
町の灯影の 侘びしさよ
こんな女に誰がした

飢えて今頃 妹はどこに
一目逢いたい お母さん
唇紅(ルージュ)哀しや 唇かめば
闇の夜風も 泣いて吹く
こんな女に誰がした


25.男の純情

作詞:佐藤惣之助
作曲:古賀政男

男いのちの 純情は
燃えてかがやく 金の星
夜の都の 大空に
曇る涙を 誰が知ろ

影はやくざに やつれても
訊いてくれるな この胸を
所詮 男のゆく道は
なんで女が 知るものか

暗い夜空が 明けたなら
若いみどりの 朝風に
金もいらなきゃ 名もいらぬ
愛の古巣へ 帰ろうよ


26.啼くな小鳩よ

作詞:高橋掬太郎
作曲:飯田三郎

啼くな小鳩よ 心の妻よ
なまじなかれりゃ 未練がからむ
たとえ別りょと 互の胸に
抱いて居ようよ おもかげを

旅ははるばる 涯ないとても
呼べば届くよ 夜毎の夢に
思い出したら 祈ろじゃないか
つきぬえにしを 身の幸を

さらば小鳩よ 心の妻よ
瞳曇るな また逢う日まで
帽子振り振り 後ふり向けば
暁(あけ)の野風が ただ寒い


27.誰か故郷を想わざる

作詞:西條八十
作曲:古賀政男

花摘む野辺に 日は落ちて
みんなで肩を 組みながら
唄をうたった 帰りみち
幼馴染の あの友この友
あゝ誰か故郷を 想わざる

ひとりの姉が 嫁ぐ夜に
小川の岸で さみしさに
泣いた涙の なつかしさ
幼馴染の あの山この川
あゝ誰か故郷を 想わざる

都に雨の 降る夜は
涙に胸も しめりがち
遠く呼ぶのは 誰の声
幼馴染の あの夢この夢
あゝ誰か故郷を 想わざる


28.並木の雨

作詞:高橋掬太郎
作曲:原野為二

並木の路に 雨が降る
どこの人やら 傘さして
帰る姿の なつかしや

並木の路は 遠い路
何時か別れた あの人の
帰り来る日は 何時であろ

並木の路に 雨が降る
何処か似ている 人故に
後姿の なつかしや


29.波浮の港

作詞:野口雨情
作曲:中山晋平

磯の鵜の鳥ゃ 日暮れにゃかえる
波浮の港にゃ 夕やけ小やけ
あすの日和は
ヤレホンニサ なぎるやら

船もせかれりゃ 出船の仕度
島の娘たちゃ 御神火ぐらし
なじょな心で
ヤレホンニサ いるのやら

風は汐風 御神火おろし
島の娘たちゃ 出船のときにゃ
船のともづな
ヤレホンニサ 泣いてとく


30.丘を越えて

作詞:島田芳文
作曲:古賀政男

丘を越えて行こうよ
真澄の空は朗らかに
晴れてたのしいこゝろ
鳴るは胸の血潮よ
讃えよわが青春(はる)を
いざゆけ遥か希望の丘を越えて

丘を越えて行こうよ
小春の空は麗らかに
澄みて嬉しいこゝろ
湧くは胸の泉よ
讃えよわが青春を
いざ聞け遠く希望の鐘は鳴るよ


31.緑の地平線

作詞:佐藤惣之助
作曲:古賀政男

なぜか忘れぬ 人ゆえに
涙かくして 踊る夜は
ぬれし瞳に すすり泣く
リラの花さえ なつかしや

わざと気強く ふりすてて
無理に注がして 飲む酒も
霧の都の 夜は更けて
夢もはかなく 散りて行く

山のけむりを 慕いつつ
いとし小鳩の 声きけば
遠き前途(ゆくて)に ほのぼのと
緑うれしや 地平線


32.夜のプラットホーム

作詞:奥野椰子夫
作曲:服部良一

星はまたたき 夜ふかく
なりわたる なりわたる
プラットホームの 別れのベルよ
さよなら さよなら
君いつ帰る

ひとはちりはて ただひとり
いつまでも いつまでも
柱に寄りそい たたずむわたし
さよなら さよなら
君いつ帰る

窓に残した あの言葉
泣かないで 泣かないで
瞼にやきつく さみしい笑顔
さよなら さよなら
君いつ帰る


33.船頭小唄

作詞:野口雨情
作曲:中山晋平

おれは河原の 枯れすすき
同じお前も 枯れすすき
どうせ二人は この世では
花の咲かない 枯れすすき

死ぬも生きるも ねえおまえ
水の流れに なに変る
俺もお前も 利根川の
船の船頭で 暮らそうよ

枯れた真菰(まこも)に 照らしてる
潮来出島の お月さん
わたしゃこれから 利根川の
船の船頭で 暮らすのよ

なぜに冷たい 吹く風が
枯れたすすきの 二人ゆえ
熱い涙の 出た時は
汲んでお呉れよ お月さん


34.旅笠道中

作詞:藤田まさと
作曲:大村能章

夜が冷たい 心が寒い
渡り鳥かよ 俺等の旅は
風のまにまに 吹きさらし

風が変われば 俺等も変わる
仁義双六 丁半かけて
渡るやくざの たよりなさ

亭主持つなら 堅気をおもち
とかくやくざは 苦労の種よ
恋も人情も 旅の空


35.妻恋道中

作詞:藤田まさと
作曲:阿部武雄

好いた女房に 三下り半を
投げて長脇差(ながどす) 永の旅
怨むまいぞえ 俺等のことは
またの浮世で 逢うまでは

惚れていながら 惚れない素振り
それがやくざの 恋とやら
二度と添うまい 街道がらす
阿呆阿呆で 旅ぐらし

泣いてなるかと 心に誓や
誓う矢先に またほろり
馬鹿を承知の 俺等の胸を
何故に泣かすか 今朝の風


36.カスバの女

作詞:大高ひさを
作曲:久我山明

涙じゃないのよ 浮気な雨に
ちょっぴりこの頬 濡らしただけさ
ここは地の果て アルジェリヤ
どうせカスバの 夜に咲く
酒場の女の うす情け

歌ってあげましょ わたしでよけりゃ
セーヌのたそがれ 瞼の都
花はマロニエ シャンゼリゼ
赤い風車の 踊り子の
いまさらかえらぬ 身の上を

貴方もわたしも 買われた命
恋してみたとて 一夜の火花
明日はチュニスか モロッコか
泣いて手をふる うしろ影
外人部隊の 白い服


37.人生劇場

作詞:佐藤惣之助
作曲:古賀政男

やると思えば どこまでやるさ
それが男の 魂じゃないか
義理がすたれば この世はやみだ
なまじとめるな 夜の雨

あんな女に 未練はないが
なぜか涙が 流れてならぬ
男ごころは 男でなけりゃ
わかるものかと あきらめた

時世時節は 変わろとままよ
吉良の仁吉は 男じゃないか
おれも生きたや 仁吉のように
義理と人情の この世界


38.旅姿三人男

作詞:宮本旅人
作曲:鈴木哲夫

清水港の 名物は
お茶の香りと 男伊達
見たか聞いたか あの啖呵
粋な小政の 粋な小政の
旅すがた

富士の高嶺の 白雪が
とけて流れる 真清水(ましみず)で
男みがいた 勇み肌
なんで大政 なんで大政
故郷を売る

腕と度胸じゃ 負けないが
人情からめば ついほろり
見えぬ片眼に 出る涙
森の石松 森の石松
よい男


39.雨の酒場で

作詞:清水みのる
作曲:平川浪竜

並木の雨の ささやきを
酒場の窓に 聴き乍ら
涙まじりで あおる酒
「おい もう止せよ」飲んだとて
悩みが消える わけじゃなし
酔うほど淋しく なるんだぜ

一輪ざしの 白薔薇を
ちぎって何故に また棄てる
花に恨みが あるじゃなし
「おい もう泣くな」いつまでも
いのちの恋の 切なさは
泣いても泣いても きりがない

グラスの底を 傾けて
飲み干す君の 悲しみを
知っていりゃこそ とめるのさ
「おい もう帰ろう」夜も更けた
小雨の道が 遠いなら
せめても送ろう そこらまで


40.夜霧のブルース

作詞:島田磬也
作曲:大久保徳二郎

青い夜霧に 灯影が紅い
どうせ俺らは ひとり者
夢の四馬路(スマロ)か 虹口(ほんきゅう)の街か
あゝ波の音にも 血が騒ぐ

可愛いあの娘が 夜霧の中へ
投げた涙の リラの花
何も言わぬが 笑って見せる
あゝこれが男と 言うものさ

花のホールで 踊っちゃいても
春を持たない エトランゼ
男同志の 合々傘で
あゝ嵐呼ぶよな 夜が更ける