花とゆめ

谷山浩子 花とゆめ歌詞
1.さよならのかわりに

作詞:谷山浩子
作曲:谷山浩子

僕の手に触れてみて きみの手とひとつになる
静かにかよいあうもの これが生きている温かさ

どんなに離れても きみをずっと覚えている
どこにいても 信じていて 僕はいつもきみと生きている

会えない朝も昼も 疲れて眠る夜も

生きていく街の中 たたずむ人混みの中
見上げればそこには空がある きみと同じ空を見る

何を見ても聞いても きみのことを思うだろう
いろんなことがあるたび きっときみに語りかけるだろう

かわいた風の中で やまない雨の中で

どんなに離れても きみをそばに感じるだろう
淋しいかい 僕も同じだよ だけどもう歩き出そう

心で抱きしめるよ さよならのかわりに

僕の手に触れてみて きみの手とひとつになる
静かにかよいあうもの これが生きている温かさ

どんなに離れても きみをずっと支えている
くじけないで 信じていて 僕はいつもきみと生きている

くじけないで 信じていて 僕はいつもきみと生きている


2.約束

作詞:谷山浩子
作曲:いしいめぐみ

あなたにあうために わたしはうまれた
星の舟にみちびかれ ここまできた

ふたつの魂が 呼びあうように
そしてふたり この場所でめぐりあった

わたしの人生が あなたにつづいてる
それは遠い過去からの 約束なの

ずっと夢みていた はなれていても
風の中に聴こえてた あなたの声

きつく抱きしめたら 炎になりそうな
胸の想い こんなにも愛している

明日をおそれないで 愛におびえないで
どんな悲しい運命も 変えてみせる

わたしの人生が あなたにつづいてる
それは遠い過去からの 約束なの

それは遠い過去からの 約束なの


3.地上の星座

作詞:谷山浩子
作曲:谷山浩子

夜めざめれば 窓のかなたに
さざめく 水銀の星たち
あの窓この窓に 人たちの灯す
見知らぬ街の灯が ゆれてる

遠い異国に 置き去りにされた
名前も忘れた 子供の心が
明かりを繋(つな)いで 星座をつくる
想いを繋(つな)いで 星座をつくる

ほら お母さんの指の間を
車が走り抜ける キラリと
あそこの赤い灯は あの人のセーター
遠くで手を振る 私に

ここは見知らぬ 都会の空の
誰にも見えない 暗い雲の中から
明かりを繋(つな)いで 星座をつくる
想いを繋(つな)いで 星座をつくる

ここは見知らぬ 都会の空の
誰にも見えない 暗い雲の中から
明かりを繋(つな)いで 星座をつくる
想いを繋(つな)いで 星座をつくる


4.うさぎ

作詞:谷山浩子
作曲:谷山浩子

きみ この間 改札口で
誰かを待っていたひとだね
リボンをかけた包みをかかえて
白い靴をはいて

もう長いこと待っているのは
その目をみればすぐわかったよ
こらえてもあふれる涙 手のひらで
こすったあとが赤かった

うさぎ うさぎ 誰を待って泣いた
みんな きみのこと 忘れてる時
うさぎ うさぎ 寒くなってきたよ
いつか日も暮れた 人ごみの中

ぼくも友達 待つふりをして
しばらくきみのこと見てたよ
ざわめく街の中でそこだけが
時を止めたようで

子供の頃に泣いて欲しがった
おもちゃの時計が目の前で
不思議な音をたててまわりだした
ぼくの胸をたたいてるよ

うさぎ うさぎ 誰かを待って泣いた
いつまでも そうして 待っているの
うさぎ うさぎ 声もかけられずに
ぼくはただ黙って きみを見てたよ

うさぎ うさぎ 涙ながせもっと
知らん顔で過ぎる 都会の夜
うさぎ うさぎ 駅も街も人も
きみのその淋しさで うずめるまで


5.あたしの恋人

作詞:谷山浩子
作曲:谷山浩子

あたしの恋人は 飛行士で
初めての 空を 飛んだ時に
真赤な炎 吹き上げながら
落ちて来たけど 死ななかった
それから今まで 生きつづけて
あたしのとなりに 今もいるわ
これからもずっと このままだと
あたしの髪を なでながら

あたしは知ってる あの人が
夜ごとの眠りに夢みるのは
あの日の きらめく 風の中で
燃えつき砕ける 自分の姿
夢から醒めれば またためいき
あたしのからだにしがみついて
光のかわりに暗い汗を
風のかわりにくちづけを

あなたが好き
あなたが好き
死ぬまで そばに いてあげるよ

あなたのもの
あなたのもの
死ぬまで そばに いてあげるよ


6.よその子

作詞:谷山浩子
作曲:谷山浩子

温かな明かりがともる 小さな家の窓の外に
きみはたたずみのぞきこんでる ささやかな家族の夕餉

父と母とふたりの子供 わずかなすきま そのすきまに
きみはどんなに座りたいだろう 閉ざされた家族の時間

「誰かいるよ」指さす弟 振り向く父と母と姉と
決してあかないガラスの向こう 呼びかける声はくぐもる

「どうしたの どこから来たの 早くお帰り うちへお帰り」

うなずいて 歩き出すきみ 日暮れの道を影になって
たどりつくのはまた別の家 のぞきこむ家族の時間

きみはよその子 どこにいても
きみはよその子 誰といても
あんなに仲良く遊んだあと
帰る友達の背中を見てる

丘の上から見おろす町は いくつもの家 いくつもの窓
全ての窓はあかない窓だ そう言ってきみは泣いたよ

燃え上がる赤い夕焼け 町を焼き尽くせ 跡形もなく

きみの夢は涙に歪む 淋しい影が世界になる
きみは幻影の焼け跡を見る 焼け焦げたきみの心を

きみはよその子 母に憧れ
きみはよその子 母を憎んだ
果てしない旅の始まりは
もう思い出せない記憶の彼方

「それでも僕は 全ての家の
全ての人の幸せを
祈れるくらいに強い心を
強い心を 僕は持ちたい」

雲の中 巨大な人が 巨大な腕を空にひろげた

きみを焦がす熱い炎は いつか温かな光になる
心つつむ夕焼けマント 抱きしめた きみの命を

丘の上から見おろす町の ひとつの家の窓が開いた
やがてまたひとつ そしてまたひとつ 次々と窓が開いた

ここから見える全ての家の
全ての人の幸せを
祈れるくらいに強い心を
強い心を 僕は持ちたい

ここから見えない全ての家の
全ての人の幸せを
祈れるくらいに強い心を
強い心を 僕は持ちたい

きみはよその子 宇宙の子供
全ての家の 窓を開くよ
きみはよその子 わたしの子供
閉ざした心の 窓を開くよ


7.真夜中の太陽

作詞:谷山浩子
作曲:谷山浩子

寒い夜 暗い部屋 ひとりぼっちでも
凍える指を暖める人がいなくても
燃えろ 私の太陽 燃えろ その火を絶やすな
燃えろ 私の命 赤く 暗闇を照らして

信じてた人が去り 心に血が流れても
私はいつも変わらずに 私なのだから
燃えろ 私の太陽 燃えろ その火を絶やすな
燃えろ 私の命 赤く 悲しみをとかして

泣きながら胸をはれ 静かに朝を待て
木枯らしの丘にひとり立つ 孤独な樹のように
燃えろ 私の太陽 燃えろ その火を絶やすな
燃えろ 私の命 やがて世界が
光に満ちる 朝まで


8.すずかけ通り三丁目

作詞:谷山浩子・あまんきみこ
作曲:谷山浩子

何気ない町の角を ふとまがったら
そこはまるで 静かな夢
けむるような 日ざしの中で
突然 思い出してしまった
朝のにおい 水の音
突然 よみがえる あの頃の
幸せな あの子とわたし
思い出は眠っている 心の奥に
だけどきょうは たずねて来た
時の彼方 すずかけ通り三丁目の白い家

突然 思い出してしまった
雨のやさしさ 雲の色
かすかな記憶のかたすみに
風の中 あの子の瞳
思い出は眠っている 心の奥に
だけどきょうは たずねて来た
時の彼方 すずかけ通り三丁目の白い家


9.NANUK

作詞:谷山浩子
作曲:谷山浩子

白くきらめく 氷の世界
歌もことばも きみは知らない
きびしい冬と めぐみの春と
数えきれぬ毎日を ひとりみつめている

わけは知らない ここで生まれた
わけは知らない ここで生きてる
わけは知らない 何があっても
強く強く 生きていく
前へ 歩いていく

きみの 果てしない旅の
未来は どこへつづく
きみの もの言わぬ背中
風だけが吹きぬける 明日へ

わけは知らない ここで生まれた
わけは知らない ここで生きてる
わけは知らない 宇宙の中で
鳥や けもの さかなたち
ともに 息づいてる

きみの 果てしない旅の
未来は ぼくの未来
遠くはなれた この国から
生きぬいてと 祈るよ 祈るよ

母から子へと つづく命を
ただ守って 生きていく
きみは 歩いていく

強く強く 生きていく
前へ 歩いていく


10.ピエレット

作詞:谷山浩子
作曲:谷山浩子

悲しみだけが 胸をふさぐ夜
あまえる人が 誰もいない夜
目をとじてごらん
きみの心の奥で
ピエレットが 笛を吹く
ピエレットが 笛を吹く
きみを笑わせようと
きみを歌わせようと

世界中の人が きみを嫌いでも
たとえすべてが きみに背をむけても
ねぇ 生きてごらん
きみの心の奥で
ピエレットが 笛を吹く
ピエレットが 笛を吹く
きみを笑わせようと
きみを歌わせようと
ピエレットが 笛を吹く

どんな小さな 子供の胸にも
どんなかわいた 人の心にも
たとえ息をひきとる その瀬戸ぎわにさえ
ピエレットが 笛を吹く
ピエレットが 笛を吹く
もえるかすかないのち
ひろがれ 海のように

だから 誰も きみを殺せない
誰も 誰かを 殺しちゃいけない
きみは 生きて行けよ
きみの 心の奥で
ピエレットが 踊るから
ピエレットが 踊るから
きみを笑わせようと
きみを歌わせようと
ピエレットが 踊るから


11.あかり

作詞:谷山浩子
作曲:谷山浩子

心澄まして みつめてごらん
何も見えない 暗闇の中に
ひとつ ぽつんとあかりが灯る
青い外灯 かすかな光

何もないと思いこんでた
きみの小さな 心の庭に
浮かび上がるやさしい姿
一本のやせた木立ち

少し離れた 別のどこかで
ごらん ふたつめの あかりがともるよ
淡い光が 照らし出すのは
赤い自転車 野菜を積んだ

ぽつりぽつり あかりがついて
そのたびきみは みつけるだろう
古びたベンチ 煉瓦の倉庫
店の窓 飾る花たち

やがてすべての あかりがついて
きみの目の前 思いもかけない
光り輝く 巨大な街が
森や運河が 現れてくる

これがきみの ほんとの姿
きみの知らない 豊かなきみさ
暗い狭い 闇の部屋から
きっときみは 帰ってくる

忘れないで 凍える夜も
ちぢこまるきみの その魂が
幾千万の きらめく灯へと
きっといつか 帰ってくる


12.DESERT MOON

作詞:Dennis De Young・日本語詞:谷山浩子
作曲:Dennis De Young

その時 光がはじけた
ほほえんで あなたがいた
まわりの景色も 友達も
あなたの陰で 見えなくなった
なんて不思議なこと

かわいた都会で あなたは
少年の目をしている
幼いあの頃 あこがれた
砂漠の月の 光の青さ
今でも忘れない

あなたとわたしは おんなじ夢をみてる
Dreamers only Dreamers
わかるの 死ぬまであなたとなら 歩いて行ける
Dreamers only Dreamers on Desert Moon
on Desert Moon on Desert Moon Desert Moon

ことばのうえでは 愛など
わかっているつもりでいた
好きだと思った人もいたけど
今ならわかる これが初めて
たった一度の恋

あなたとわたしは おんなじ夢をみてる
Dreamers only Dreamers
わかるの 死ぬまであなたとなら 歩いて行ける
Dreamers only Dreamers on Desert Moon
on Desert Moon on Desert Moon Desert Moon

今夜のふたりは 月にも手がとどくわ
Dreamers only Dreamers
こんなに輝く すべてがあの頃のままね
Dreamers only Dreamers on Desert Moon
on Desert Moon on Desert Moon Desert Moon


13.僕は帰る きっと帰る

作詞:谷山浩子
作曲:谷山浩子

地球の形にしなる 長い長い帰り道
僕は帰るよ きっと帰るよ きみのところへ!

ひとりでフラフラ遊び回ってたら
いつのまにかこんなに 遠いとこまで来てた
おかしな世界に迷いこんだみたい
どこまでつづくコスモス どこまでも同じ景色

星がバラバラ落ちてくる 果てない線路の上を
ずっと歩いて 僕は歩いて あきらめないで

地球の形にしなる 長い長い帰り道
僕は帰るよ きっと帰るよ きみのところへ!

なんだかあやふやで 頼りない気分さ
名前や性別もうまく思い出せないよ
こんなこと初めて きみと離れすぎて
呼吸や歩き方までも もう忘れそうさ

きみが僕を呼んでるよ 遠くてもきこえるんだ
僕は帰るよ 時を超えても きみのところへ!

巨大な倉庫のような世界 ゴーゴーかけぬけて
たとえたましいだけになっても きみに会いたい

地球の形にしなる 長い長い帰り道
僕は帰るよ きっと帰るよ きみのところへ!

巨大な倉庫のような世界 ゴーゴーかけぬけて
たとえたましいだけになっても
きみのところへ 今!


14.しっぽのきもち

作詞:谷山浩子
作曲:谷山浩子

なりたいものは たくさんあるけど
いちばん なりたいものは きまってる
それは しっぽしっぽ しっぽよ
あなたの しっぽよ
スキというかわりに しっぽがゆれるの

そよかぜふいて わたしをさそうの
「ぼくとあそぼう」ダメよ 行かないわ
わたし しっぽしっぽ しっぽよ
あなたの しっぽよ
スキというかわりに しっぽがゆれるの

だけどねすこし みじかいきがする
これじゃ あなたのかおが 見えないよ
わたし しっぽしっぽ しっぽよ
あなたの しっぽよ
あなたが にしをむけば しっぽはひがしよ

あなたがわらう しっぽもわらうよ
あなたがふりむく しっぽもふりむく
わたし しっぽしっぽ しっぽよ
あなたの しっぽよ
ガンバル わたしまけない しっぽのきもちよ

しっぽしっぽしっぽよ
あなたの しっぽよ
スキというかわりに しっぽがゆれるの


15.おやすみ

作詞:谷山浩子
作曲:谷山浩子

おやすみ ぼくの 大好きな人
遠くはなれて 会えないけれど
おやすみ ぼくは あなたのことを
想っているよ どんな時でも
淋しくないか ひとりの夜は
話す相手は いるのだろうか
おやすみ 今夜 あなたのために
灯りをひとつ ともして眠るよ

おやすみ ぼくの 大好きな人
遠い窓辺で 祈っているよ
おやすみ ぼくは あなたのために
ほほえみひとつ あげられないけど
淋しくないか ひとりの夜は
暗い夜道で 迷っていないか
おやすみ 今夜 あなたの夢の
かたすみにでも はいれるものなら

淋しくないか ひとりの夜は
ひざをかかえて 泣いてはいないか
おやすみ ぼくの 大好きな人
今夜また とどかない 子守唄


16.テルーの唄

作詞:宮崎吾朗
作曲:谷山浩子

夕闇迫る雲の上 いつも一羽で飛んでいる
鷹はきっと悲しかろう
音も途絶えた風の中 空を掴んだその翼
休めることはできなくて
心を何にたとえよう 鷹のようなこの心
心を何にたとえよう 空を舞うよな悲しさを

雨のそぼ降る岩陰に いつも小さく咲いている
花はきっと切なかろう
色も霞んだ雨の中 薄桃色の花びらを
愛でてくれる手もなくて
心を何にたとえよう 花のようなこの心
心を何にたとえよう 雨に打たれる切なさを

人影絶えた野の道を 私とともに歩んでる
あなたもきっと寂しかろう
虫の囁く草原(くさはら)を ともに道行く人だけど
絶えて物言うこともなく
心を何にたとえよう 一人道行くこの心
心を何にたとえよう 一人ぼっちの寂しさを


17.まもるくん

作詞:谷山浩子
作曲:谷山浩子

新宿の地下道の
壁から出てくる まもるくん
壁からはえてる
ななめにはえて笑ってる

ヒザのところに顔がある
くるくる回る顔がある
道行く人は
誰もかれも見ないふり

警官の制服の
肩から出てくる まもるくん
肩からはえてる
大きくはえて笑ってる

ヒザのところに顔がある
ダリヤのような顔がある
警官は気づかない
まわりは見ないふり

建売住宅の
屋根から出てくる まもるくん
屋根からはえてる
キノコのような まもるくん

ヒザのところに顔がある
窓より大きな顔がある
家族は気絶
近所の人は見ないふり

まもるくん のびるふく
まもるくん ゆるいふく
まもるくん わたしも
まもるくん なりたいな

麦わら山脈の
空から出てくる まもるくん
空からはえてきて
地表をくまなく 埋めている

窓をあけると 顔がある
外を歩けば 顔がある
朝から薄暗い
みんなで見ないふり


18.満月ポトフー

作詞:谷山浩子
作曲:谷山浩子

今日は天気も荒れ模様
風がびゅんびゅん いい気持ち
だからね 小ぎれいに着飾った
家猫にちょっとごあいさつ

おびえている 臆病な
鳥の目玉はいい気持ち
だけどね 大丈夫 悪くても
晩のおかずになるだけよ

ありがとう! みんなスキだよ
せこいやつ くちゃくちゃしゃべるやつ
まとめて 満月ポトフー
煮えてる 鍋の中

退屈した狼の前で
へりくつこねるなんて
ハンパな勇気ならやめとけば
首にアタマついてるうち

思い通り吹かなけりゃ
風も八つ裂き いい気持ち
だけどね 大丈夫 こわくない
あたし自分がこわくない

暗い暗い森の奥を
赤い火のように走り抜けろ
心よりも速く速く
あの山を越えれば暁が見える

思い通り鳴かなけりゃ
鳥もはりつけ いい気持ち
だけどね 大丈夫 こわくない
あたし自分がこわくない

ありがとう! みんなスキだよ
にぶいやつ ちくちくからむやつ
まとめて 満月ポトフー
夜通し 鍋の中

ありがとう! みんなスキだよ
せこいやつ くちゃくちゃしゃべるやつ
まとめて 満月ポトフー
煮えてる 鍋の中


19.冷たい水の中をきみと歩いていく

作詞:谷山浩子
作曲:谷山浩子

冷たい水の中をきみと歩いていく
何も望むものはない 夏の一日
グラスの底を
水をとおしてくる 七月の日射しが
横顔をきらめかせる
遠い過去からほほえむきみの

みのらずに終わった恋は
夏ごとにすきとおる
みのらずに終わった恋は
こわいほどすきとおる

あんまりそれがきれいなので
ぼくの命も奪っていく
あんまりそれがきれいなので
誰にも言葉はつうじない

冷たい水の中をきみと歩いていく
なんて青くあどけない 夏の一日
グラスの底を
誰かの読んでいる 小説の挿絵の
湖の中に ぼくは今沈んでる
誰も見えない

みのらずに終わった恋は
重さもかたちもなく
みのらずに終わった恋は
思い出も影さえなく

あんまり静かに輝くので
ぼくのからだはこわれていく
あんまり静かに輝くので
音楽ももう聴こえない

あんまり静かに輝くので
ぼくのからだはこわれていく
あんまり静かに輝くので
ぼくの命も奪っていく


20.森へおいで

作詞:谷山浩子
作曲:谷山浩子

風のことばがきこえない きみは恋をしたんだね
毎朝来ると約束の場所に 今朝は こなかった
森の暗がりでぼくと 不思議な遊びをしよう
いつものように笑って 森へおいで ぼくの

ガラスでできたカナリアは きみのために 歌わない
背のびした金の靴は きみの足を傷つける
それでもきみは街へ行く 金の靴で彼と
ぼくの作る風の靴は もっとステキなのに

ぬれた土のにおいがする 草で編んだスカート
枝をつたう露のゆびわ 木の葉の鈴のイヤリング
森でみつけた宝物 みんなきみにあげる
いつものように笑って 森へおいで ぼくの

森へおいで 森へおいで ぼくはきみを泣かせない
森へおいで 森へおいで きみを不安にさせない
そんな不器用なキスの 呪文をぬけだして
ぼくと遊ぼう 約束どおり 森へおいで ぼくの


21.風のたてがみ

作詞:谷山浩子
作曲:谷山浩子

明け方の月が 僕の夢を揺らしている
耳もとで誰かが僕に何か告げる 不思議な声
長い眠りから目を醒ませと 夢の時は終わりだと
ささやきかける声にせかされ 目を開いた

僕の目に映るものは 見知らぬ広い世界
どこまでも続く空と 乾いた寒い大地

夢の王国はどこに消えた 光満ちる孔雀の庭
金と銀の天使たちの 楽の調べ
崩れ落ちていく城壁や 財宝抱いた難破船
かがり火の中 踊る娘の白い足も

今はない どこにもない 呼んでも答はない
ただひとり 僕はひとり 無人の荒野に立つ

風が叫んでる これでやっと やっときみは自由だと
風は激しく空を叩いて 笑っている
僕も風になり 風とともに 旅に出よう あてもなく
朝日を受けてきらめく僕の 銀のたてがみ

僕を呼ぶきみの声が 確かにきこえている
この胸に星のように まだ見ぬきみが光る

僕を呼ぶきみの声が 確かにきこえている
ただひとり 僕はひとり 無人の荒野に立つ


22.さよならDINO

作詞:谷山浩子
作曲:谷山浩子

あの日 空から 不思議な雨が降るのを見た
twi twi tu twa tu twi tu twa
つぶやき 落ちてくる

Plankton 鏡文字 数えきれない言葉の
Plankton 幾千万 砕けて散った言葉の

きみの最後の手紙が 届くのを待っていた
twi twi tu twa tu twi tu twa
明け方 道の上

Plankton 鏡文字 空を埋めた その時
全部わかったんだ きみにはもう会えない

DINO さよなら
魔法の風 さよなら
きみは僕の 宇宙だったんだよ

きみと僕との 二億二千二百五十八万年
twi twi tu twa tu twi tu twa
瞬く 光と闇

笑いころげたジュラ紀 夢と過ぎた白亜紀
文字を覚えて書いた 謎の星の哲学

始まりのない 終わりのない 永遠の時間を
twi twi tu twa tu twi tu twa
きみとずっと 生きたかった

終わりはあった方が いいんだよって きみの声
聞こえるはずがない きみはいない どこにも

DINO さよなら
欠けたティーカップ さよなら
夜 さよなら 僕は旅立つ

巨大なきみの背中が 僕を乗せて走る
twi twi tu twa tu twi tu twa
あの日のふたりを見た

Plankton 鏡文字 さかさに書いたARIGATO
Plankton いつまでも 僕の空で ゆれてる


23.第2の夢・骨の駅

作詞:谷山浩子
作曲:谷山浩子

山奥の 小さな駅に とまったら
青い空気を ごらんなさい
青い空気は 骨が好き
あなたの骨を 食べてしまいます
青い空気は 骨が好き
あなたの命を 食べてしまいます

山奥の 小さな駅に とまったら
暗い緑を ごらんなさい
暗い緑は 骨が好き
あなたの骨を なめてとかします
暗い緑は 骨が好き
あなたの命を なめてとかします
(すてきな ごちそう)

忘れている 幼い頃 神社の森の暗がりで
約束したことはないか?
思い出せないことはないか?
来てはいけない骨の駅
忘れていた骨の駅
吸い寄せられた 古い力に

山奥の 小さな駅に とまったら
のぞきこんでは いけません
かたく目を閉じて 早くこの駅を
通りすぎるのを 待ちなさい
山の奥へとつづく細道を
ホームに降りて ふらふらと
歩き出してはいけません


24.鳥籠姫

作詞:谷山浩子
作曲:谷山浩子

鳴いてごらん Cuckoo きれいな声で
ぼくのことを愛していると
いとおしい小鳥 きみはぼくだけの
いつもそばで 歌っておくれ

やさしくささやく あなたの声が
今も確かに きこえるけれど
それは海からの 風が運んだ
どこにもいない人の幻

長い長い孤独の時
帰らぬ人を 待ちつづけて

わたしはわたしを ここに閉じこめた
柳の枝で編んだ鳥籠
もう誰もわたしの 背中のねじを
巻いてくれる人もいないのに

鳴いてごらんCuckoo きれいな声で
ぼくのことを愛していると
できるならきみを この籠の中
鍵をかけて 閉じこめたいよ

あなたの願いは どんなことでも
すべてかなえてあげたかったの
だけど願いだけ ここに残して
あなたは消えた 永久(とわ)の旅へと

海の見える 丘の家に
ほこりだけが 静かに積もる

わたしはわたしを ここに閉じこめた
柳の枝で編んだ鳥籠
わたしを作った あなたの腕に
帰るその日を ひとり待ちながら


25.電波塔の少年

作詞:谷山浩子
作曲:谷山浩子

淋しさのかたちをした月が傾いて
危うく夜空に貼りついている
眠らない街の景色 僕は見下ろしてる
誰も僕には届かない

見える限りの家やビルの窓にきみがいる
数えきれないきみを ずっとずっとみつめている

街は今 魔法のように
僕のひろげた手の中で 光る箱庭に変わる
この夜をきみにあげるよ 全部きみのものだよ
僕はこんなにきみのことだけを 好きなのに

悲しみの深さなんて 何の力にもならない
心は武器にならない
ちっぽけなこの体を僕は変える
目に見えない不思議な力へと

自由に飛ぶよ 僕は電波 星も越えて行く
言葉と歌を抱いて 寒い夜の空を走る

きみへと飛ぶよ 僕は電波 星も越えて行く
言葉と歌を抱いて 寒い夜の空を走る

でもきみの受信装置 ひどく壊れている
部屋のすみにころがしたままで
もうきみはそこにいない 誰も聴いていない
ノイズだけが闇を汚してる

もう僕はどこにも
どこにもいなくなる


26.終電座

作詞:谷山浩子
作曲:谷山浩子

終電はなぜ混むの
通勤の時間帯でもないのに
終電はなぜ混むの
みんなもっと早く帰ればいいのに
ってみんな思ってる
わたしも思われてるるるるる

終電は同じラッシュでも
朝よりも感情的なラッシュだ
なぜならば飲んでいる
乗客の八割以上が飲んでる
寝る人 笑う人 爆発したい人

その時突然 すべての人の
耳の奥に響く 不思議な声

ねえみなさん どうしてうちに
そこまでして帰るのです
ねえみなさん どうせ帰っても
疲れて寝て また仕事
帰るのやめませんか いっそこのまま

終電が空を飛ぶ
ふうわりと魔法かけた箱のように
ぎゅうづめのわたしたちを乗せたまま
午前一時の夜空を
道行く人たちが
驚き見上げてるるるるる

まるでこれは銀河鉄道だ
乗客のひとりがそう口に出すと
そうだこれは銀河鉄道だ
口々に人々がそう言いだした
行こう星の海へ
さそりの火はまだかララララ

ねえみなさん それは無理ですよ
わたしはただの電車です
大気圏抜けるその手前
そのまた手前のもっと下
ビルより少し高い それが限界

だけどこれは銀河鉄道だ
低くてもじゅうぶん銀河鉄道だ
乗客はあきらめない
誰ひとりあきらめない銀河の旅
こんな狭いとこに つめこまれてるのに

その時突然 みんなで閃く
星に行けないなら 星になれば

そういうわけで その時から
東京タワーのすぐ上に
あらわれいでたるその星座
ぎゅうづめラッシュの終電座

ななめに長く伸びている
人をつめこみ伸びている

夜はライトをつけている
明るくライトをつけている
だけど昼間に見ると だいぶ汚れてる


27.テングサの歌

作詞:谷山浩子
作曲:谷山浩子

紀勢本線 各駅停車 南部の次の岩代駅の
ひと気のないホームの古いベンチの上にあたしはいるの

あたしテングサ 海からとれた紫色よ もじゃもじゃ髪よ
誰か忘れた誰か捨てたの 思い出せない何も知らない

ぽかぽかお陽さまよ いい天気
誰もいないのよ なぜかしら
そりゃあ あたしにとってはどうでもいいことだけど
人間のいない地球ってきもちのいいものね

汽車の時間に汽車が来ないの 夜になっても灯りがつかない
海はみえるが船は通らず 道は見えるが車は通らず

あたしテングサ 海からとれた 海の生まれは退屈知らずよ
何万年でも何億年でも ずっとこうしてぼんやりできるの

しゅるしゅるそよ風よいいきもち
駅長さんの帽子がほら ころがっているわ
そりゃあ あたしにとってはどうでもいいことだけど
人間のいない地球って もぎたてトマトみたい

紀勢本線 各駅停車 南部の次の岩代駅の
ひと気のないホームの古いベンチの上で あたしはフワフワ


28.かおのえき

作詞:谷山浩子
作曲:谷山浩子

かおのかたちの かおのえき
どこが口やら 眉毛やら
誰もわからぬ かおのえき
どこが改札やら 線路やら

切符を求めて二千年
改札たずねて二億年
いつかはどこかへ行けるかも
そのうち何かに乗れるかも

人がうろつく 人が増えるよ
人が減らずに 人がたまるよ
人がうろつく 人がぶつかる
人が住みつき 町ができるよ

耳から耳へと橋をかけ
毛穴に種まき二毛作
鼻の頭からふもとへと
重なりあうよに家が建つ

まばたきひとつ 虎が飛び出す
まばたきふたつ ネズミが逃げる
泣けば洪水 笑えば地震
クシャミの嵐 みんなバラバラ

全ての人が考えているよ
どうしてこんなとこにいるのか
普通の駅に行くはずだったのに
どこかで道を間違えたのか

全ての人の 願いはひとつ
いつか行きたい 普通の駅へ
切符が買えて 売店があって
電車に乗れる 普通の駅へ

かおのかたちの かおのえき
どこが口やら 眉毛やら
かおのかたちの かおのえき
あなたの後ろに 迫り来る


29.時の少女

作詞:谷山浩子
作曲:谷山浩子

時の少女が 心をのせて
黄金の舟で 川を下る
時の少女は 目も鼻も口もない
まっしろな顔で にたりと笑う

<悪いけど 思い出もらった
あきらめておくれ
このまま 流れて
夢にも帰らない海の彼方>

時の少女が あの人のせて
あやつる櫂の 黄金の雫
あたしの手の中 握りしめてた
ダイヤが 突然 石に変わる

<悪いけど この人もらった
あきらめておくれ
あたしの腕の中で
やさしくやさしく死なせてやるよ>

時の少女の 黄金の川は
あたしの目の中 流れて行くよ
いろんな人の 泣き顔 笑い顔
波間に キラリとあらわれ 消える

<人になんかつかまってもムダさ
流れて行くだけ
あんたは ひとりさ
あたしが愛してあげるよ今夜は>


30.カイの迷宮

作詞:谷山浩子
作曲:谷山浩子

冬空 遠い彼方から
僕の上に 雪は降りてくる
だまって 僕はみつめてた
その確かな 美しいかたち

心を持たない 氷の花たち
真白く輝く 北の音楽

世界が 僕の目の前で
ひらけていく 色鮮やかに
世界が 僕に告げていた
さあ その手でわたしをつかめと

鏡はかけらに 体は粒子に
心は言葉に こまかく割れていく

そして僕は ひとりになって
忘れたことさえ 忘れてしまった
そして僕は ひとりになって
雪の底で 白い夢を見てる

ガラスに描いた星の地図
透かしてほら 空を見てごらん
ガラスに描いた星たちが
ただ明るく 空を照らすだろう

たとえば孤独や 貧しさ 醜さも
年老い死にゆく 人のさだめさえ

僕は決して怖れはしない
僕はいつか さがしあてるだろう
すべての謎の 扉の鍵
確かなもの ただひとつの答

そして僕は ひとりになって
忘れたことさえ 忘れてしまった
そして僕は ひとりになって
雪の底で 白い夢を見てる

そして僕は ひとりになって
忘れたことさえ 忘れてしまった
僕のすみかは 氷の下
誰か僕を 僕を見つけてくれ


31.催眠レインコート

作詞:谷山浩子
作曲:谷山浩子

こんな悲しい時 とてもじゃないけど
暖かなベッドの中では眠れない
真夜中に起き出して 眠れる場所をさがしまわり
家中をうろついた
バスルーム キッチン 本棚の陰 玄関 タンスの中

でもこんな悲しい時 とてもじゃないけど
静けさのとばりの中では眠れない
何もかも乾いてる 冷たい夢に乾ききってる
青ざめた月の窓 開いて 空を見上げて 空に

ねえ お願いだから雨を降らせて
すました顔して わたしを見ていないで
間の抜けた子守唄 聴かせてくれるヒマがあるなら
屋根を打つどしゃ降りの 激しい雨の音を聴かせて

AH! それはとても信じられない
殺人的な前代未聞のどしゃ降り
もう誰も何も考えられない 誰も何も感じられない
思い出せない

催眠レインコート 催眠レインコート
ほしいのは眠りだけ 心は要らない 濡れて重いから
催眠レインコート 催眠レインコート
包まれて 眠る

こんな悲しい時 とてもじゃないけど
穏やかなシトシト雨では 眠れない
どしゃ降りの雨よ降れ わたしの屋根は崩れ落ちて
どしゃ降りの雨よ降れ わたしの家は沈んでいく

坂道の急流を 流され消える魚の群れ
揺らぐライト あえぐクラクション
夜更けの街は滝壷のよう

ねえ お願いだから雨を降らせて
まだまだこれくらいじゃたりない
ねえ お願いだから雨を降らせて
まだまだこれくらいじゃたりない

ねえ お願いだから雨を降らせて
まだまだこれくらいじゃたりない


32.素晴らしき紅マグロの世界

作詞:谷山浩子
作曲:谷山浩子

幸せの予感 それは紅マグロ
お口の誘惑 それは紅マグロ
ピチピチのプリプリで ほどよく締まってジューシーで
ひと口かめば脳天突き抜け 広がる旨味

誰もがほほえむ そんな紅マグロ
つぶらな瞳 そんな紅マグロ
できることなら紅マグロと お手々つないで歩きたい
紅マグロの誕生日に お呼ばれしたい

ああ呼んでいる ものすごく呼んでる
わたしのこの道は マグロへつづく道
ああ呼んでいる とめどなく呼んでる
わたしのこの道は マグロへつづく道

そのままで食べたい でかい紅マグロ
かかえて食べたい 重い紅マグロ
できることなら紅マグロのおうちに住みたい 暮らしたい
壁も畳もお風呂もベッドも 全部紅マグロ

ああ呼んでいる ものすごく呼んでる
わたしのこの道は マグロへつづく道
ああ呼んでいる とめどなく呼んでる
わたしのこの道は マグロへつづく道


33.お昼寝宮・お散歩宮

作詞:谷山浩子
作曲:谷山浩子

遠い思い出の 空にただよう
光るゆりかご お昼寝の舟
わたしはいない どこにもいない
さがしに行こう はるかな国へ

遠い思い出の 空にただよい
何を見ている お昼寝の月
太古の眠り 植物の夢
石に恋した かすかな記憶

POM POM POM POM 花の種
かくれているよ
大事な秘密が わたしの中に

風が心に 心が風に
入れかわる道 お散歩の道
わたしはひとり 見えない森で
見えない鳥の歌を聴いたよ

足には軽い 銀の靴をはき
どこまでもただ 歩いて行くよ
遠く遠くへ もっと遠くへ
知らない国へ 昔の海へ

遠い思い出の (POM POM POM POM 花の種)
空にただよう (かくれているよ)
光るゆりかご (大事な秘密が)
お昼寝の舟 (わたしの中に)
わたしはいない (針のない時計の)
どこにもいない (動かない真昼を)
さがしに行こう (眠れ眠れ)
はるかな国へ (眠りの中に秘密のかぎが)

さがしに行こう はるかな国へ