全曲集/金沢情話

金田たつえ 全曲集/金沢情話歌詞
1.金沢情話(原作「滝の白糸(泉鏡花)」より)


2.しのび恋

作詞:三浦康照
作曲:石中仁人

一つの傘を 二人で持って
人目をさける 雨の町
今夜はあなたを 帰さない
わがまま云って 甘えたら
きっとあなたは 困るでしょうね
炎えて悲しい あゝしのび恋

あなたの愛を ただひとすじに
たよって生きる 私です
いけないことと 知りながら
別れてくれと 云うまでは
たとえ地獄へ 落ちてもいいの
ついてゆきます あゝどこまでも

あなたの妻に なる日は夢ね
夢でもいいの 信じたい
夜明けの部屋に 残されて
涙を拭いて いたことを
きっとあなたは 知らないでしょう
辛さこらえる あゝしのび恋


3.かくれ傘

作詞:荒川利夫
作曲:保田幸司郎

ふたりは夫婦に 見えるでしょうか
揃いの浴衣の いで湯橋
傘に隠した こころの中に
離れられない 命火よ
涙のような…
雨を写した 川を見る

あなたをこんなに 愛してしまう
私が悪いと 叱る雨
ひとりぼっちを 支えてくれる
そんなあなたが いればこそ
明日もここで…
山の紅葉に 染まりたい

逢ってはいけない もう駄目だよと
言われる恋でも 恋は恋
傘に隠れて 逢いたい想い
捨てゝどうして 生きられる
涙のような…
雨を写した 川を見る


4.くちなし情話

作詞:吉田旺
作曲:鈴木淳

好きで我が子を 死なせる母が
どこにいましょう いるならば
それは鬼です 母親じゃない
白いくちなし 匂う夜は
なぜかあの子が この乳房
探し求めて いる気がします

それであなたの 気が済むならと
ひどい仕打ちも 裏切りも
耐えてきました やつれた胸で
そんな私を 置き去りに
逝ったあなたを 恨みます
ましてくちなし 零れる宵は

可愛我が子を 亡くした母に
乱れ縁の 置き土産
抱けば泣けます 幼いこの子
白いくちなし 目で追って
こぼす笑顔に 罪はない
生きて行きます この子とともに


5.夢螢

作詞:菅麻貴子
作曲:深谷昭

季節はずれの 螢がひとつ
そっとあなたに すがって生きる
「春をください」 この手のひらに
闇にはらはら 舞い散る雪は
女ごころの 夢追い螢

少し遅れて うしろを歩く
そんな癖さえ ぬけない私
「明日をください」この手のひらに
あなたのために 尽くせるならば
遅れた春を 悔やみはしない

窓に積もった運命の雪も
やがて溶ければ 明日が見える
「夢をください」 この手のひらに
涙ひとすじ 夜霧に変えて
命を灯す しあわせ螢


6.風の追分みなと町

作詞:仁井谷俊也
作曲:蘭一二三

風の江差に 来てみれば
はぐれ 鴎が 波に舞う
あなたお願い帰ってきてよ
日暮れの海に名を呼べば
老いたヤン衆の 老いたヤン衆の 追分が
おんな泣かせる 港町(みなとまち)

あなた偲べば 鴎の島にヤンサノ-エ-
沈む夕陽も なみだ色

浜に埋もれた 捨て小舟
どこか私に 似た運命
ほろり落とした涙のなかに
やさしい笑顔浮かぶ夜は
海の匂いの 海の匂いのする 酒場で
吐息まじりの こぼれ酒

窓の向こうの 漁火は
女ごころの 命火よ
いつか逢えるわ あなたに逢える
浴衣につつむ 湯あがりの
燃える素肌が 燃える素肌が あの夜を
思いださせる 港宿(みなとやど)


7.夕照の女(せきしょうのひと)


8.と金


9.夕顔

作詞:はち惣平
作曲:保田幸司郎

濡れた黒髪 梳く指の
細さに泣けば 焦がれ月
あなたの浴衣の 残り香を
乳房包んで…
庭の風鈴 手にとれば
咲いて夕顔 恋しのぶ

和紙の団扇を 帯にさし
ふたり寄り添い 蛍川
夢もはかない うたかたの
おんな一輪…
こころ淋しく 夏に咲く
白い夕顔 何を泣く

雨はむらさき 宵化粧
書いては捨てる みだれ恋文
追えないあなたに 炎えるほど
若くはないわと…
言って聞かせる 縁先に
揺れて夕顔 みれん咲き


10.花街の母

作詞:もず唱平
作曲:三山敏

他人にきかれりゃ お前のことを
年のはなれた妹と 作り笑顔で 答える私
こんな苦労に ケリつけて たとえひと間の部屋でよい
母と娘の 暮しが欲しい

いくらなじんだ水でも 年頃の娘のいる
左褄(ひだりづま)
住みにくうございます
浮名を流した昔もありましたが…
ああ あのひと
私を残して死んだ あの人を恨みます

厚い化粧に 憂いをかくし
酒で涙をごまかして 三味にせかれて つとめる座敷
あれが子持ちの芸者だと バカにされても夢がある
それはお前の 花嫁姿

女の盛りはアッという間です 若い妓の時代
もう私はうば桜 出る幕ないわ
でも もう少し この花街に 私を置いて下さい
せめてあの娘に いい花聟が 見つかりますまで

何度死のうと 思ったことか
だけど背で泣く 乳呑児の 声に責められ十年過ぎた
宵に褄とる女にも きっといつかは幸福が来ると
今日まで 信じて生きた


11.あかね雲

作詞:一ツ橋雪
作曲:保田幸司郎

出稼ぎばかりの 明け暮れに
泣いてたお前はヨー もうはや二十才
明日は文金花嫁御寮
見せてやりたや 見せてやりたや恋女房
うすい縁のヨー あかね雲

手塩にかけた 娘なら
幸せになれヨー 涙がほろり
女房ゆずりの 器量よし
空を仰いだ 空を仰いだ横顔に
幼いままのヨー 泣きぼくろ

たまにはおやじの ひげ面が
恋しくなったらヨー 一緒に帰れ
愛し殿御と ヤヤ連れて
抱いてやろうぞ 抱いてやろうぞふところに
明日は晴れるかヨー あかね雲


12.おんな人生恋まつり

作詞:初信之介
作曲:弦哲也

逢えりゃ極楽 逢えなきゃ地獄
恋の裏みち とおせんぼ
ままよ火の酒 いっきに呷りゃ
浮かれ化粧の 血がさわぐ
おんな人生 え〜恋まつり

泣いて涸れたと 思ったけれど
うれし涙が 残ってた
浮世歌舞伎の お芝居ならば
惚れたはれたも 芸のうち
おんな人生 え〜恋まつり

明日の行方を 聞いてもみたい
聞けば情に 水をさす
夜空こがして 花火が燃える
飛んでゆきたい 腕の中
おんな人生 え〜恋まつり


13.無法松の一生(度胸千両入り)


14.人妻

作詞:一ツ橋雪
作曲:保田幸司郎

しあわせあげると言われた人に
すがれぬ運命の それは人妻
愛することも答えることも
眠むることも 目覚めることも許されぬ
あゝ私は悪い女です
すべてをすてて 行けない女です

夢か誠か しのび逢う夜は
あやしく燃える それは人妻
尽くすことも 堪えることも
励ますことも 支えることも 届かない
あゝ私は罪な女です
あなたのために死ねない女です

死ぬも生きるもあなたのままと
心は捧げた それは人妻
寄りそうことも 見つめることも
甘えることも 安らぐことも かりそめか
あゝ私はずるい女です
おぼれて泣いても 所詮は人の妻


15.黒髪ざんげ

作詞:木下龍太郎
作曲:保田幸司朗

罪を背負って この世の中に
女は生まれて 来るのでしょうか
心ならずも 背いた男の
怨み声やら 笹の風
嵯峨野 隠れ家
ああ 黒髪ざんげ

いつか馴染んだ 花街川に
流した浮名は いくつでしょうか
どれも真実を 捧げたものを
野暮な世間が嘘にする
嵯峨野 迷い路
ああ 黒髪ざんげ

生きる限りは 男に罪を
重ねて行くのが
運命でしょうか
髪を束ねて 剃刀当てて
切れぬ迷いの 糸を切る
嵯峨野 白露
ああ 黒髪ざんげ


16.つれあい

作詞:里村龍一
作曲:叶弦大

今日も一日 お疲れさんと
つける熱燗 ひと肌なさけ
なみだ雨がふる 世間と言う川に
傘さして あなたと点す
夢はひとすじ 夫婦の灯り
愛が命の つれあい酒よ

風の冷たさ 浮世の辛さ
肩に重たい 振り分け荷物
追えば逃げてゆく 逃げれば追いかける
哀しみにふたりで泣いた
寒い暮らしを あなたと飾る
愛が絆の つれあい道よ

広いこの世で あなたの膝が
たった一ツの 泣き場所なのよ
苦労かぞえれば 両手に余るけど
倖せよ あなたとならば
遠い夜空に ふたりで咲かす
愛のいちりん つれあい花よ