暫存

陰陽座 暫存歌詞
1.螢

作詞:黒猫
作曲:瞬火

何処かで 響く鈴の音に
仄かな 光震え

そっと指先にとまって消えた
まるで刹那の 夢の様に

静かに目を開いて 全てを忘れないで
この闇い夜空に瞬く 生命の燭を

幾千幾億の命が
あやなす時の中で

ひとつ またひとつ
生まれて消える
終わることない 光の列

静かに鼓動聞いて
全てを忘れないで
星も樹も人も鳥達も
瞬きを繰り返す

静かに目を開いて 全てを忘れないで
この闇い夜空に瞬く 生命の燭を

静かに目を開いて 全てはまた始まる
いつかまたここで会えるから
私を憶えていて


2.梧桐の丘

作詞:瞬火
作曲:瞬火

朽ちゆく身体を明らめ
終わりは其の眼に緞帳を下ろす
揺蕩う古の生命は
軈て洲の花に混じりて馨る

視界の 闇を抜けて 聞こえてくる

鏘 彼方の星が 朝影に綯う藍を縹に染める
廻り来る渦の羽瀬に 身を任せても
貴方の星が 朝風に舞う埃に姿を変えるだけ
明日の瞬く場所へ

そり立つ胸に 儚げに
呼び返す慧灯の 聲を辿る

梧桐の 丘を越えて 届く光

鏘 新たな星が 戯れの目合で真逆に堕ちる
翳りゆく波の壁に 霊を委ねても
貴方の星が 玉藻に揺らぐ鮎に姿を変えるだけ
明日は渾ての魂に

鏘 彼方の星が 朝影に綯う藍を縹に染める
廻り来る渦の羽瀬に 身を任せても
貴方の星が 朝風に舞う埃に姿を変えるだけ
天空は零れ落ちて 海の同母に還る
明日を携えて 舞い上がれ


3.悪路王

作詞:瞬火
作曲:瞬火

踏んじがるは土蜘蛛の
がったり頭の鬼の倅
勿体振ったり待ったり狩ったりせぬ
時化た ちょんがれ朝廷にゃ服わぬ

(逆行! 逆行! 逆行!)我精の
(逆行! 逆行! 逆行!)魂
(逆行! 逆行! 逆行!)堕すらば
(逆行! 逆行! 逆行!)潮時よ

ふん縛るは土蜘蛛の
ばったり臀部の鬼の汚れ
一切合切伐採獺祭喝采!
陳ねた 雄鶏御宅にゃ取り合わぬ

(逆行! 逆行! 逆行!)我精の
(逆行! 逆行! 逆行!)魂
(逆行! 逆行! 逆行!)堕すらば
(逆行! 逆行! 逆行!)潮時よ

愚にも付かぬ 駁論を
実しやかに 垂れ流す

其処には無く(無い無い)
此処にだけ在る(在る在る)

絵にも描けぬ 空論を
為たり顔で 仄めかす

其処には無く(無い無い)
此処にだけ在る(在る在る)
何処にも無い(無い無い)
痴めく 姿を 最期に 聢と見届けよ

(逆行! 逆行! 逆行!)我精の
(逆行! 逆行! 逆行!)魂
(逆行! 逆行! 逆行!)堕すらば
(逆行! 逆行! 逆行!)潮時よ

(逆行! 逆行! 逆行!)我精の
(逆行! 逆行! 逆行!)魂
(逆行! 逆行! 逆行!)摩すらば
(逆行! 逆行! 逆行!)勝鬨よ


4.揺籠の木

作詞:黒猫
作曲:黒猫

紅(くれない)ひとひら 風に揺られて落ちた
祝いの花か 死花花(しかばな)か

産着は帷子(かたびら) とうに野火手(のぼて)は落ちて
常世(とこよ)に生まれて 寂しかろ

梢(こずえ)に枝に 稚児(ややこ)は実る
渡る夜風に 揺られて睡(ねむ)る

母喰鳥(ははくいどり)が ひとつ唱(うた)えば夜更け
朝風吹くまで ねんねしな

此の枝を閨(ねや)に 青葉を包(くる)みに
母の腕(かいな)を 知らぬ儘(まま)

薄紅色の 頬に一滴(ひとしずく)
夜露は 魄(たま)を悼む涙

時告鳥(ときつげどり)が ひとつ唱(うた)えば夜明け
朝影(あさかげ)射すまで ねんねしな

まだ戸は開(あ)かぬ


5.黒衣の天女

作詞:瞬火
作曲:瞬火

爛(ただ)る灰土(かいど)に独り 落つる涕(なみだ)
涸れて 何時(いつ)の間にか
復(かえ)らぬ 天(そら)を仰ぎ 手繰(たぐ)る想い 只の慰み

交(こ)ふ 人の簇(むら)が 同じ貌(かたち)に見える
安らぎを(汚穢(おわい)の)
望む末路は(末路は)鬼の国

今 此の身を砕いて 戦慄(わななき)も 傷みも
遮る 無明(むみょう)で 抱いて

罪無き稚(やや)と双(ふた)り 屍に 抱かれて 幾(いく)そ度(たび)か
阿(おもね)る 顔に嘔吐(えず)き 吐(たぐ)る念(おも)い 誰を慰み

障(そ)ふ 胸の臆で 叫(わめ)く己(おのれ)を除く
明けぬ化作(けさ)(然(さ)こそが)
餓鬼の眼(まなこ)に(眼に)見えぬ水

今 裁きを下して 吃(まななき)も 怒りも
絶え滅(き)ゆ 墓標を 抱いて

戻れぬなら 黒で閉ざす
貴方の探す女(ひと)は 待たなかった

今 此の身を砕いて 戦慄(わななき)も 傷みも
愛子(まなこ)の 乳汁(ちしる)と

今 裁きを下して 憐れみも 歎(なげ)きも
刻意(こくい)の 柩と 焼(く)べて


6.挽歌

作詞:瞬火
作曲:瞬火

行(ゆ)き過(す)ぐ 亡(な)き身(み)の 群(むれ)を
帷(とばり)が 漆黒(くろ)に 染(そ)める
暮(く)れるも 在(あ)りし世(よ)は 帰(かえ)りはせぬと

譬(たと)えば 宣(の)らさるるとて
齢(よわい)は 誰(だれ)も 知(し)らず
明日(あす)にも 散(ち)り逝(ゆ)く 我(わ)が身(み)と 念(も)う

留(と)まれど 過(す)ごせど 重(かさ)なるが 随(まま)
辿(たど)りし 道形(みちなり)
遺(のこ)るものが 在(あ)るならば 悔(く)い乍(なが)ら
弔(とぶら)う 迄(まで)

嗚呼(ああ) 過日(かじつ)は 孔(あな)の海(うみ)
然為(さす)れども 積(つ)もりて 餞(せん)に 代(か)わる

萌(も)ゆれど 枯(か)れれど 重(かさ)なるが 随(まま)
辿(たど)りし 道形(みちなり)
遺(のこ)るものが 在(あ)るならば 笑(え)み乍(なが)ら
花(はな)を 手向(たむ)ける


7.組曲「義経」~夢魔炎上

作詞:瞬火
作曲:瞬火

剥き出しの骨を 爪で つと掻き裂く
虚ろなる病みの 睡り醒ます様に
抑えられない 欺瞞の棘が
此の身を刺す 謀を 張り巡らして

(セリフ)
世に仇なすのが悪 其れを誅するが正義
有事には再びその天地が返り 畢竟、私は今、悪か

何かを果たし乍ら 誰かに疎まれ
叫びは 返す返す 明かりを 探し求めて

望みは 漂うだけ 凍える 哭が今 消えゆく 風に千切れて

無明の睡りに 疲れ 迷い 誰そ彼る
失意の韜晦 冥き星を数えて
盞に浮かぶ花弁 暗い闇に揺蕩う
胸に宿る火の鳥は 何時の日か雁になる

柘榴に なり果てる 己の頭に
群がる 埋葬虫は 兄の面をしている
殺めた数だけ 愛を手に入れると 無間の奈落も 一躍に跳べると
髑髏に 口付ける 虚栄の猿は
そ知らぬ 素振りで 誰が為に唄う
殺めた数だけ 穢に塗れていると
無間の奈落に 真逆に呑まれると

嗚呼 徒に 一縷の陽を求めても
嗚呼 一向に 異郷の地に 転びて落ちる

(セリフ)
渾ては 渾ては一族の名を賭して
渾ては 渾ては亡き御父君の誇りを賭して
犯した不文律も罪科も 殺めた命さえも
あなたと新しい時代の理想郷の為だというのに
もうよい、黙れ 詭弁を弄すな 政れぬ虎よ
我は今、汝という悪魔を 燃やす

振り仰いだ 鈍色の空に 刻が 夜を 連れてくる
激よと 交わす言葉も 明る 色を 失ってゆく
もう逃げられぬなら 此処で果てるとも
只其れで 此以上 離れないのなら

抱き寄せて 抱き締めて 抱き留めて もう一度
束の間の 別離でも 曇らさぬ様に
愛されぬ 相舞えぬ 相生えぬ もう二度と 惑う 夢の中に
彷徨う 声にならぬ嗚咽を 白い雪が嗤う

(セリフ)
抜け抜けと舞いおって 命乞いのつもりか
されど子は別じゃ 後の憂いとなろう 殺してしまえ
何故このような惨い仕打ちを
己が命を取られた方が増しで御座います
ああ この子だけはあの人に抱いて欲しかった
お許し下さい もう逢えませぬ

望みは 漂うだけ 傲れる 嶺が今 移ろうまで
其処に降る雨は 躊躇うだけ 凍える
哭が今 消えゆく 風に千切れて


8.羅刹

作詞:瞬火
作曲:瞬火

寧悪なる貌形 闇に紛れて
怨み辛み纏いて立つ
静寂なる真秀ら場 酸鼻を極め
月の貌も朱に染まる

暴 憎 念
血達磨の族 呪いを込めて
烙印 押さるる鬼は

※忘れじの追儺と紊る汚吏の流れ
聯亘の罪 連れを枕かれ
手くろもの相応の拷を以ち贖え
淵謀の荼毘 怨は絶えぬと※

啓白する内憤 神に疎まれ
継ぎの吾子も呆気に縊れる暴 憎 念
火達磨の族 救い求めて
経絡 突かるる餓鬼は

忘れじの追儺と紊る汚吏の流れ
聯亘の罪 連れを枕かれ
手くろもの相応の拷を以ち贖え
淵謀の荼毘 怨は絶えぬと

暴 憎 念
茹だる魔の嬰児 挿げる鬼殿
脈々 続く蛇道は

(※くり返し)